令和の三冠王が振るわなかった。1次ラウンドから14打数2安打7三振の大スランプ。昨シーズンの“無双状態”から変わり果てた姿の背景には──。
「本物の怪物を目の当たりにして、すっかり自信をなくしてしまった」
そう、ため息混じりに話すのはさるNPB関係者である。その視線の先には、準々決勝を控えたチーム練習のフリー打撃で快音を連発する村上宗隆(23)の姿があった。しかし東京ドームに響く小気味いい打球音には似つかわしくない、沈鬱な表情を浮かべていた。NPB関係者が続ける。
「変調の兆しが表れたのは3月4日でした。遅れてチームに合流した大谷のフリー打撃を生で見て、その打球速度と飛距離にショックを受けてしまった。投手兼任の『二刀流』で、いわば、片手間で打者をこなしているわけです。そんな異次元の存在と相対して、いかに自分がちっぽけな存在なのかを感じてしまったのでしょう」
とはいえ、かつてパ・リーグで対戦してきた打者たちはそれを克服してきた。
「山川穂高(31)など『あれは人間じゃない。異星人だ。早くアメリカに行ってほしい。かなわないんだから』と記者らに話して、言語化することでやり過ごしていましたから。ところが若い村上は真正面から受け止め、史上最年少三冠王のプライドがズタズタに引き裂かれてしまった」(前出・NPB関係者)
まさか、本番直前になって重度のメンタル面の弱さが露呈されるとは‥‥。それでも1次ラウンドのオーダー表には、「4番村上」の文字が記されていた。スタメン選考の舞台裏をスポーツ紙デスクが明かす。
「栗山監督が首脳陣を説得しました。強化試合で結果の出ない村上を『4番から下げるべき』という声が絶えませんでしたが、『それこそ精神的に潰れかねない。俺は4番村上と心中する』と説き伏せたといいます。本戦前に大谷からも『4番は村上にすべきです』と進言する後押しがあったそうです」
そんな2人の期待が重石になったのか。3戦目となるチェコ戦の5打席目までノーヒットが続いた。
「ストライクとボールの判別に四苦八苦していた。どうも、昨シーズンの後半から、狭く設定された村上のストライクゾーンが影響しているらしい。というのも、ホームランの日本選手記録更新や最年少三冠王のかかった時期だけに審判もビビッてしまった。際どいコースをストライク判定して、凡退を重ねた村上が記録を逃そうものなら、ファンからバッシングを受けるのは審判のほうですからね」(前出・NPB関係者)
事実、今大会では外角や高めのボールを見送ってはストライク判定。カウントを悪くして三振と凡打の山を築いていく。ベンチで暗くなる村上をチームメイトが慰める場面もあったが、
「『ナイス進塁打』や『状態が悪い時は誰にでもある』といったポジティブな言葉が逆に村上を苦しめ、『周りに気を遣われることが嫌だ』と口にしていました。ですが、気を遣わせるような態度で雰囲気を悪くしていたのは村上自身なんですけどね」(前出・スポーツ紙デスク)
そんな中、“師匠”と慕う岡本和真(26)には、「俺に『いい加減打てよ!』と言ってくださいよ」と、持っていきようがない心の叫びをぶつけていた。
「調子の上向かない“弟子”を励ましたかったのでしょう。岡本は『次に打てんかったら裏に来い。歯を食いしばれよ』と冗談半分に村上を元気づけたといいます。これが功を奏したのか、チェコ戦で放った初ヒットにつながりました」(前出・NPB関係者)
何と言っても“村神様”。本調子を取り戻した姿で帰国してほしいものだ。