ここ数年、中東地域で開催される国際競馬への日本馬の参戦が相次いでいる。
今年2月25日(現地時間)にサウジアラビアのキングアブドゥルアジーズ競馬場で行われた「サウジカップデー」では、20頭もの日本馬が大挙して出走。そのレースはサウジカップ(G1、ダート1800メートル)、ターフスプリント(G3、芝1351メートル)、レッドシーターフハンデキャップ(G3、芝3000メートル)、サウジダービー(G3、ダート1600メートル)、リヤドダートスプリント(G3、ダート1200メートル)といった具合だ。
このうち、メインのサウジカップではパンサラッサ、ターフスプリントではバスラットレオン、レッドシーターフハンデキャップではシルヴァーソニックの日本馬が、それぞれ優勝を手にした。
同様に、続く3月25日(現地時間)にアラブ首長国連邦のメイダン競馬場で行われた「ドバイワールドカップデー」でも、26頭もの日本馬が大量出走した。ドバイワールドカップ(G1、ダート2000メートル)、ドバイシーマクラシック(G1、芝2410メートル)、ドバイターフ(G1、芝1800メートル)、ドバイゴールデンシャヒーン(G1、ダート1200メートル)、UAEダービー(G2、ダート1900メートル)、ゴドルフィンマイル(G2、ダート1600メートル)である。
メインのドバイワールドカップではウシュバテソーロ、準メインのドバイシーマクラシックではイクイノックス、UAEダービーではデルマソトガケの日本馬が、それぞれ1着でゴールしている。
だが、サウジやドバイで開催される国際競走における日本馬の華々しい活躍の陰で、春の国内G1戦線は有力馬が次々に離脱するという異常事態に陥っている。
事実、2月19日に東京競馬場で行われた上半期のダート王決定戦「フェブラリーステークス」(G1、ダート1600メートル)では、昨年の最優秀ダート馬で史上初の同レース3連覇が期待されていたカフェファラオが出走を回避し、サウジカップへ。
また、上半期の芝中距離路線の締め括りレースと言われる宝塚記念に向けた「大阪杯」(G1、阪神競馬場、芝2000メートル)でも、昨年の年度代表馬イクイノックス、21年の日本ダービー馬シャフリヤールなどが出走を回避し、ドバイシーマクラシックへと駒を進めたのだ。JRA(日本中央競馬会)関係者が嘆く。
「これまでJRAは、日本馬の海外遠征を積極的に後押ししてきました。ところが、国内G1を回避する有力馬が相次ぐ前代未聞の異常事態に直面。JRA内では今、『近い将来、国内G1はスターホースが1頭も出走しない、名ばかりのレースになってしまうのではないか』という懸念の声が上がり始めているのです」
期せずして招いた国内競馬の危機。次回以降は、その内情をさらに掘り下げていく。