飲食店の経営で黒字を出すには、いかに経費を抑えて、より収益を上げられるかに尽きる。その必勝策のひとつが「煮干し出汁」だった。
飲食業界を取材するライターが語る。
「煮干しは乾物であるため、長期保存が可能。腐らせるリスクをかなり抑えられるのです。その上、かつお出汁よりも廉価であることが魅力とされてきました」
その結果、煮干し系ラーメン店は増え続けているようだが、ここへきて逆風に見舞われているというのである。このライターが続ける。
「煮干しの仕入れ値が暴騰しているんです。煮干しを使う店舗が増殖したことも無関係とは言えないと思いますが、昨年から大貧漁が続いたことが最大の要因。カタクチイワシの煮干しの原価が跳ね上がっています。これまでの2倍の値を付けていますね」
都内のラーメン激戦区で煮干し系のラーメンを提供する、人気店の店主が嘆く。
「煮干しが高すぎて、お客さんがたくさん来てくれても、利益が出ないんですよ。なんとかリーズナブルな価格で仕入れをしようとすると一定のブランドではなくなるため、日によってスープの味が変わってしまう。もともと立地を考えて家賃の高いエリアに店を構えてしまったため、一度撤退して移転します。再開は夏以降になってしまうかもしれませんね…」
どうにかコロナ禍を乗り切った飲食店にまたも災難とは、つくづく理不尽な時代である。