阪神が最高のスタートを切った。DeNAとの京セラドームでの開幕3連戦で3連勝。敵地の広島に乗り込んでも勢いは止まらず、開幕4連勝は岡田監督が前回指揮をとった08年以来の15年ぶり。やることなすことうまくいく感じで岡田監督も上機嫌この上ない。選手らには厳しい監督というイメージがあったと思うけど、ベンチでニコニコしているからチームのムードが明るい。
ブランクを感じさせず、春から勝負勘が冴えまくっている。驚かされたのは4月2日の一戦での原口の代打2ラン。2点リードの8回に一塁走者が二盗に成功すると、カウント1ストライクで島田に代打・原口を送り込んだ。球場がざわつく中で、ものの見事にエスコバーの真っすぐを左翼席へホームラン。リードを4点に広げて、3連投になる湯浅を温存して楽に逃げ切れた。岡田監督は試合後に「俺にしたら普通のこと」とコメントしたが、関西のスポーツ紙には1面で「神采配」の見出しが躍った。
投手陣の戦力は昨年からリーグ屈指やから、課題の打撃と守備が向上すれば、自然と白星は増える。岡田監督は就任時からベンチワークでの得点を宣言しており、まさに有言実行。盗塁やヒットエンドラン、セーフティースクイズなど積極的に動かして、コツコツと点を重ねている。
適材適所のコンバートもうまく機能している。中野を二塁に回し、遊撃のレギュラーに抜擢した高卒5年目の小幡が攻守に期待以上の働き。2日のDeNA戦の7回2死一、三塁の守備では、宮崎のフェンス直撃の打球で本塁を狙った三塁走者を中堅・近本との中継プレーで刺した。「京セラはバウンドすればすごく伸びてくれる」と、計算どおりに低く、強い球でのワンバウンド送球。生還を許せば1点差に迫られる場面で、自慢の強肩でチームを救った。
岡田監督からすると、センターラインの守備を重視しての起用。小幡にはバットの方ではそれほど期待していなかったはず。それが開幕戦から3安打2打点の活躍やから、笑いが止まらない。小幡だけでなく、今年からの新レギュラーが打ちまくっている。3番のノイジーは振り回すタイプでなく、広角にヒットを打ち分けるタイプ。大崩れしないから、開幕4試合で全試合安打を放ち、そのうち3試合で2安打。走塁もそつがなく、優良外国人になりそう。
大山、佐藤輝の4、5番をノイジーと挟む形となっているのが、ドラフト1位の森下。オープン戦の活躍そのままに本番でも結果を残している。常に自分のタイミングで強くバットを振れるのは大したもの。相手にデータがそろってからが本当の勝負となるけど、そんなに大きな穴があるようには思えない。あとはケガしないこととスタミナ。6番はチャンスで回ることが多いから、間違いなく打線のキーマンとなる。
阪神ファンは岡田監督が言うところの「アレ」にこのまま一直線で向かうことを願っているが、それほど甘くないのも事実。実際に阪神が開幕4連勝を飾った過去3度はすべて優勝を逃している。この先、誰かがブレーキになる、アクシデントがある、そう思っておかないといけない。勝負事というのは、波に乗っている時は何をやってもうまくいく。逆風が吹き始めた時にこそ、経験豊富な監督の手腕の見せどころとなる。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コーチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。