4月12日に東京ドームで行われた阪神・巨人戦は、まさに「伝統の一戦」と呼ぶにふさわしい「記録と記憶に残るゲーム」となった。
この日、プロ初勝利を目指して先発のマウンドに立った阪神の3年目右腕・村上頌樹は、7回表まで巨人打線を無安打無四死球に封じるパーフェクトピッチングを展開。ところが、阪神の1点リードで迎えた8回表の攻撃で、岡田彰布監督は打順が回ってきた村上を降板させ、代打の切り札・原口文仁を打席に送り込んだ。
これで村上の完全試合の可能性は消滅。東京ドームに詰めかけた阪神ファンからどよめきが沸き起こる中、代打・原口は凡打に打ち取られ、8回裏にはついに同点に追いつかれた。村上の初勝利までが消滅し、その後、試合は延長戦に突入したが、迎えた10回表、阪神は勝ち越しに成功し、伝統の一戦は2対1で阪神が勝利を収めた。
結果オーライとはいえ、村上を降板させた岡田采配に対しては早速「まだ7回84球だったのに」「これは岡田監督の土下座案件」「点の取れない貧打線が全て」「交代はやむを得なかった」など、賛否両論が渦巻く事態となった。
だが、専門家の見立てはいささか違うようだ。全国紙プロ野球担当記者は、村上降板の舞台裏を次のように明かす。
「村上のピッチングは、取材記者の間から『第2の村神様』と称賛の声が上がるほど、実に見事なものでした。ただ、後半に入ってからは、それまで鋭いキレを見せていたストレートにオジギ(ボールの伸びが失われること)が目立つようになった。勝負事に『たられば』は禁物ですが、岡田監督の決断にはそれなりの理由があったということです」
実は民放の実況中継番組で解説していた江川卓氏も、これと同じような見解を口にしていたという。全国紙プロ野球担当記者が続ける。
「江川さんも『村上投手を続投させれば、危なかったかもしれない』との見方を示していました。チームの勝利と村上の完全試合…8回降板と今後の起用について、岡田監督は試合後の勝利監督インタビューで『お~ん、それは全く悩まへんかったなぁ』『次は先発ローテで使わなアカンなぁ』と語っていましたが、まさに岡田監督の『非情と温情』が垣間見える采配だったと言えるのではないでしょうか」
次回、村上はどんな好投を演じてくれるのか。ファンの期待は膨らむばかりなのだ。