何度も実写化された人気作であり、原作の熱心なファンが多いことから、放送前から関心が高かったドラマ「犬神家の一族」(NHK BSプレミアム)。4月22日には前編が放送され、29日には後編が登場する。監督、演出は「鎌倉殿の13人」(NHK)の吉田照幸で、脚本は実写版「岸辺露伴は動かない」(NHK)の小林靖子と実力派がそろったが、前編の評価は決して高くはなかった。特に原作ファンの反発は大きなものだ。
やり玉に挙げられたのは、ヒロインの野々宮珠世のキャスティングだ。テレビ誌記者は、
「演じたのは『岸辺露伴は動かない』や『どうする家康』に出演した古川琴音。演技力が高く、評価されている女優です。ただ、野々宮珠世のイメージに合っているかというと…。原作では頭脳明晰な絶世の美女なので、そこまでではないだろうとの指摘が相次いでいます」
76年の映画で珠世を演じたのは島田陽子、06年の映画では松嶋菜々子だった。特に島田の珠世は高く評価され、覚えている人は多いことだろう。
さらに吉岡秀隆の金田一耕助にも、ツッコミが入った。年を取りすぎている、というのである。
犬神家の時、金田一は原作では数え年で37だが、吉岡の金田一は髪が真っ白で、とてもこの年には見えない。「髪は黒にしてほしかった。頭をかきむしるシーンが台なし」「イメージが違いすぎる。こんなにおじいちゃんじゃない」と批判の声が上がっているのだ。
磯川警部が那須警察署長として登場したことに、納得がいかない人も多い。
「磯川警部は『本陣殺人事件』や『獄門島』『悪魔の手毬唄』に登場した、金田一のよき理解者であり、パートナー。ただ、警部は岡山県警所属で、本来であれば犬神家には登場しません。それを栄転したということにして、無理やり出したんです。これに何か意味があるのか。後編で何もなければ、批判は高まることでしょう。原作では署長の名前は橘で、映画では加藤武が演じ、『よし、わかった』の名セリフが生まれました」(前出・テレビ誌記者)
ツッコミどころだらけのドラマだが、犬神松子を演じた大竹しのぶの演技だけは絶賛の声が。原作ファンの不満を、大竹の演技が吹き飛ばせるか。後編の評価はそこにかかっている。