鈴木氏が語る。
「安倍さんは長期政権を狙っていて、ここまでで前半戦を終えたと考えています。安全保障や憲法改正も諦めておらず、解散というカードを切ることを意識し始めています」
来年9月の総裁選をにらみ、解散カードを切った時に目の上のたんこぶとなるのが他ならぬ石破氏だ。政治評論家の浅川博忠氏が解説する。
「今解散すれば自民党が勝つ可能性が高い。選挙では幹事長が資金面も含め、議員の面倒を見ます。石破シンパが増え、力が大きくなりすぎると、来年9月の総裁選で巨大なライバルになってしまうのです」
解散カードをいつでも切れる状態で必要なのは、文句も言わずに選挙に邁進する「イエスマン」タイプの幹事長だ。岸田文雄外相(57)が次期幹事長の筆頭候補にあがっているのがその理由だという。
「安倍さんは外交を全部自分でやります。普通の外相なら文句を言うでしょう。ところが、岸田さんは言わない。場合によっては自分で調整して、『総理どうぞ』とさえ言います。そんなこともあって、安倍さんの評価がきわめて高くなりました」(鈴木氏)
もう一人、候補としてあがっているのが総理の盟友である下村博文文科相(60)である。
「すでに岸田さん、下村さんのどちらかで固まっています。自民党には総理と幹事長は違う派閥という『総幹分離』の原則があり、下村さんは同じ派閥。そんなところからも岸田さんのほうが可能性は高いでしょう」(浅川氏)
幹事長続投の目は完全についえ、もはや“失脚”同然だが、鈴木氏はそれでも石破氏は安保相の打診に首を縦に振るとは思えないと言う。
「石破さんは防衛相を務めた経歴からもわかるように、自民党きっての外交・安保通ですが、安保相は安倍さんの考えを超えて安全保障の法律を作ることはできない。安保に持論を持っている石破さんが言いなりの立場に甘んじるとは考えにくい」
石破氏がこと安保に関しては総理にも譲れないことを示すエピソードがある。安倍総理が集団的自衛権の閣議決定に当たって、そのプランを聞いた石破氏は、
「フンって感じだよ。フンッ」
と、その思慮の浅さを鼻であしらったというのだ。
「入閣したら石破さんに総理の目はありません。次の総裁選を勝てば、安倍さんは自分への影響力が強い人物を後継指名します。これは2人の最終戦争なのです」(鈴木氏)
官邸の思惑をうっちゃり、無役になった石破氏が次期総裁選で総理を打ち負かす“奇手”はあるのだろうか。