LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案を、5月の先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)前に成立させるべきか。推進派の岸田文雄首相、公明党の山口那津男代表と、慎重派の萩生田光一政調会長との間で、対立が生じている。これに参戦しているのが、推進派のラーム・エマニュエル駐日米大使で、安全保障問題とは違った構図での攻防が展開されている。
「平和の党」を掲げる公明党は、日米同盟の軍事面での強化には慎重姿勢を示し、自民党やアメリカ政府との立場の違いが鮮明となる。ところがLGBT問題では、山口氏とエマニュエル大使は、
「合意形成が近づいているのではないか」(山口氏)
「(憲法の)枠を越えるものではなく、(憲法の理念を)強化しようとするものだ」(エマニュエル大使)
と歩調を合わせている。
サミットで成果を上げたい岸田首相も、これに乗っている。首相の指示で自民党内では、超党派議員連盟がまとめた理解増進法案の「差別は許されない」という表現を「不当な差別は許されない」に見直すなどして、法案を5月前半にも国会提出する動きが出ている。
これに異論を唱えるのが萩生田氏で「サミットで時間を切るのは筋が違うのではないか」と主張。反対派議員は「差別に不当も何もない。差別は許されない、と言った時点で恣意的な判断になる」と語る。
この問題は、安倍晋三元首相も強い関心を持って慎重論を唱えていただけに、萩生田氏としても簡単には引き下がれない。攻防戦はヤマ場を迎えている。