LGBTなど性的少数者への理解増進を図る法案をめぐり、5月19日に開幕する先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)前に法案の国会提出を目指す岸田文雄首相と、反対派が多い安倍派所属議員の間で板挟みに──。自民党の萩生田光一政調会長のことである。
萩生田氏は高校時代、額にソリ込みを入れたリーゼント姿で鳴らし、数々の「番長伝説」を持つ。昨年7月に殺害された安倍晋三元首相の「腹心」として可愛がられ、安倍派の次期会長と目されるが、その前に試練を迎えているのだ。
萩生田氏は早稲田実業に進学したものの、卒業パーティー券を売ったのがバレて、1度目の停学に。さらに東京朝鮮中高級学校の生徒と乱闘して、2度目の停学処分を食らった。
それがたたってか、早稲田大学には進学できず、明治大学に通うことに。八王子市議、都議を経て、安倍氏の引きで国政へ。身長180センチを超える大柄で、国会の中でも威圧感がある。
そんな萩生田氏がまさに神経をすり減らしているのが、LGBT法案への対応だ。安倍氏が生前、この法案には慎重だったことから、安倍派の保守系議員たちは、性急な国会提出はすべきでないとして、党内手続きでも反対意見を表明している。
自民党は党内手続きを終え、広島サミット前に国会に提出したい。ただ、法案への反対・慎重意見が多かったにもかかわらず、党内会合で幹部側が議論を打ち切ったことから、安倍派の保守系議員を中心に、不満が渦巻いている。
批判の矛先は、同じ安倍派でも推進派の稲田朋美元防衛相に向いてきたが、国会提出の段取りとなれば、阻止できない萩生田氏の力量を問う声が出てくる。批判が強まれば、安倍派「萩生田会長」への移行に反対する声が高まりかねないのだ。
萩生田氏らは岸田首相の顔を立てて法案を提出するものの、立憲民主党などは、差別に関する文言を修正したことに「内容が後退している」と反発している。そのため、超党派で成立させるという前提が崩れたとして、法案は廃案になるとの見通しを描いて、反対派への説得にあたろうとしている。
もっとも、これではいかにも後ろ向きな対応であり、「番長らしくない」(安倍派若手)と言われる始末。
100人を超える最大派閥となった安倍派に対する、岸田首相の揺さぶりの一環との見方もあるのだが…。