「犬神家の一族の新解釈を切り開いた」「最高の犬神家」と、NHKの「犬神家の一族」(NHK BSプレミアム)に絶賛の声が上がっている。称賛されたのは、小林靖子氏の脚本だ。
4月22日に前編、4月29日に後編が放送されたが、前編放送後の評判は微妙だった。原作では絶世の美女という扱いの野々宮珠世が、それほど美しくない。さらに吉岡秀隆演じる金田一耕助が年を取りすぎている、と批判され、「見どころは大竹しのぶの演技だけ」という原作ファンもいたほどだ。
ところが後編では、小林氏の脚本がその大竹を脇役に追いやってしまうものだった。テレビ誌記者が興奮冷めやらぬ口調で振り返る。
「主人公は金田一ですが、犬神松子は影の主役。これまでのどの作品でも、犯行を告白するクライマックスは名場面とされ、松子を演じる女優の見せ場でした。今回も大竹が見事な演技で母の愛を表現してみせたんです。ところが、事件の後に衝撃的なシーンが追加されたため、松子の印象がどこかへ吹き飛んでしまいました」
それは金田一が事件の裏側にあった謀略に気付き、ある人物を問い詰めるという場面だ。その謀略が本当であれば、松子や青沼静馬がその人物に操られて犯罪を重ねていたということになる。影の主役はその人物で、松子は脇役だ。
「『犬神家の一族』が誕生してから73年、何度も実写化されてきましたが、この説を提唱したのは初めてでした。アラも目立つのですが、語り尽くされてきた犬神家の新たな一面を作り出したことは間違いありません。次に実写化する時は苦労するのでは。NHK版と比較されるのを嫌がって、そもそも実写化されない可能性もあります」(前出・テレビ誌記者)
絶賛されたNHK版犬神家の一族にどんな結末が待っているのか。未見であればNHKオンデマンドでチェックした方がいい。