プロは結果がすべて。浦和レッズがACLチャンピオンズリーグ優勝で、それを証明してくれた。
アマチュアなら、たとえ負けても「惜しかった」「最後まで頑張った」という慰めの言葉で許されるだろう。でも、プロはやっぱり結果である。現に敗れたアル・ヒラルの選手は表彰式で準優勝のメダルを首にかけられた後、すぐに外していた。そのくらい優勝と準優勝では、天国と地獄の差があるということだ。
今季のACLはイレギュラーな大会だった。中東勢の西地区に比べ、東地区はオーストラリアのレベルが落ち、中国のクラブに至っては、新型コロナウイルスの影響で2軍チームで参加。事実上、日韓の一騎打ちとなった。
しかもノックアウトステージの1回戦から準決勝まで、昨年8月にさいたま市で開催されたのも、浦和には大きなアドバンテージとなった。西地区のノックアウトステージが今年2月だったことを考えると、東地区を勝ち上がった浦和は、あまりにも時間があきすぎている。
また、本来の決勝戦は今年2月末にホーム&アウェーで行われる予定だったが、埼玉スタジアムの芝の張替えと重なり、約2カ月間、延期になった。もし延期されていなければ、浦和にとって新監督を迎える今季最初の公式戦となり、勝つのは難しかっただろう。
運やツキは確かにあったが、それを味方に付けて結果を出した。2018年の鹿島以来の日本勢の優勝は、ほかのJ1クラブにも刺激になったはずだ。
ただ、素直に喜べない部分もある。アル・ヒラルの選手は、個の能力で浦和の選手を完全に上回っていた。試合を支配していたのもアル・ヒラルで、浦和のシュートは2試合でわずか8本。しかも2得点はラッキーな形で、そのうちの1点はオウンゴールだ。日本勢はアジアレベルの試合でも、守ってカウンターのサッカーでなければ勝てなくなったのか。アジアレベルなら、主導権を握って相手を圧倒して勝たなければ、世界では通用しないのではないか。
リーグ戦を見ても確かに上位に顔を出してはいるが、得点ランキングを見れば、上位に浦和の選手はいない。守備はいいが、攻撃力という部分ではまだまだ物足りない。
そこはスコルジャ新監督にかかる期待が大きい。ここまではACL決勝から逆算して、チームを作ってきた感がある。本人も「ACL決勝まで先発は変えない」と、ほぼ同じメンバーで戦ってきた。アル・ヒラルを分析し、リカルド前監督のベースに上積みし、なんとか優勝にこぎつけたのだ。
でも、ここからは違う。スコルジャ監督が目指すチーム作りが本格的に始まる。しかもスコルジャ監督には、リカルド前監督とは比べものにならない実績がある。ポーランドリーグ優勝5回、カップ戦優勝4回に加え、ポーランド代表監督の候補として名前が挙がったほどで、その手腕は欧州でも評価されている。
守備のベースはできている。あとは攻撃力、得点力をどう上げて行くのか。耐えて勝つサッカーではなく、Jリーグでもアジアでも主導権を握って、勝ち切る強い浦和を作れるか。スコルジャ監督の手腕に期待したい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。