大方の予想を覆した、大きな大きな引き分けだった。
4月30日(日本時間)に行われたACLチャンピオンズリーグ決勝、浦和レッズ対アル・ヒラル(サウジアラビア)の第1戦は、アル・ヒラルのホームで行われた。
戦前の予想は、アル・ヒラルの断然優位。その理由は昨年末に開催されたカタールW杯で、サウジアラビア代表が歴史的勝利を挙げたアルゼンチン戦に先発したイレブンのうち、9人がアル・ヒラルに所属しているからだ。さらに外国人選手も元ナイジェリア代表のイガロ、マリ代表経験のあるマレガなど強力な布陣で、2月のクラブワールドカップも決勝に進出している。
対する浦和は、カタールW杯に出場したのが酒井宏樹だけで、ACL決勝を初めて経験する選手が多く、アル・ヒラルの5度目の優勝は確実と思われていた。
ところがフタを開けてみれば、浦和が最後の最後まで集中を切らさず、貴重なアウェーゴールを決め、1-1で引き分けたのだ。
この結果は偶然ではなく、必然だった。浦和はこの初戦に合わせて、4月23日の川崎戦後の夜に、中東へ移動した。できるだけ早く中東入りすることで、時差の調整や現地の環境に慣れることができる。だから浦和の選手たちは、最後まで足が止まることなく戦えたのではないか。
一方のアル・ヒラルは、ACL決勝の浦和戦が4月に入って8試合目というハードスケジュール。4月23日のカップ戦準決勝は延長120分を戦い、オウンゴールでなんとか勝ったものの、疲れはそうとう溜まっていたはずだ。現に浦和戦も先制したが、自慢の攻撃陣もそこから畳みかけるような攻撃力はなかった。
ただ、まだ何も決まっていない。第2戦は5月6日、埼玉スタジアム。両チームに優勝のチャンスがあるといっていい。
アウェーゴールで有利に立つ浦和は、戦い方を変える必要はない。初戦と同じように、しっかりとブロックを作って、カウンターで追加点を狙えばいい。前半0-0で折り返して、後半勝負。そんな戦い方ができれば最高だ。スタジアムを真っ赤に埋め尽くすサポーターが後押ししてくれれば、時間が経つにつれ、さすがのアル・ヒラルも焦ってくる。そうした状況で浦和が1点取れば、勝てるだろう。
ただ、アル・ヒラルは簡単に勝てる相手ではない。初戦の86分に退場者を出して10人になっても、何度かチャンスを作っている。前線にはワンチャンスあれば決めきれるタレントが揃っている。最後の最後まで目が離せない戦いになるだろう。
Jリーグ30周年という記念の年に、浦和がアジアチャンピオンになって大きな花を添えてくれることに期待したい。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。