春GIシリーズのただ中。初夏の香りが充満する今週のメインは、ヴィクトリアマイルだ。今年で18回と、まだ歴史の浅いGI戦だが、4歳馬以上の牝馬が集うマイル戦。なかなか見応えがある一戦である。
先週のNHKマイルCと同様、ごまかしの利かない力どおりの決着を見込んでいいレースでありながら、これまでの17年間で馬単による万馬券は7回(馬連は3回)。調子の波が大きく消長の激しい牝馬だけに、評判馬がそのまま──というわけにはいかず、下馬評どおりに決着しないというのがこのGI戦の特徴だろう。
過去17年間のデータを見ても1番人気馬が5勝(2着4回)、2番人気馬は2勝(2着0回)。1、2番人気馬によるワンツー決着は、わずか1回のみだ。
牝馬は6歳を過ぎると繁殖に上げることが多いこともあるが、このGIは4歳馬が過去17年間で9勝(2着12回)と群を抜いている。これに続くのが5歳馬の6勝(2着4回)。6歳、7歳馬はともに1勝で、馬券的には生きのいい4、5歳馬に目をつけるのが筋ということになる。
それにしても今年は難解だ。絶対視できる馬が見当たらないというか、質の高い馬ばかりがそろい「ハイレベルな混戦」とみていいのではないだろうか。
そうした中でも、昨年度の3歳女王の座に就いたスターズオンアースが最有力と言ってよさそうだが、桜花賞馬でありながら、現状としてはマイルよりも中距離がベストと思えてならない。しかも前走の大阪杯(2着)が脚部不安明けでの好走だったことを思うと、俗に言う“2走ボケ”の不安もなくはない。強い馬であることは確かだが、穴党としてはどうしても疑いの目を向けたくなる。
悩むところだが、もろもろ考慮した上で最も期待を寄せてみたいのは、4歳馬のルージュスティリアだ。
前走の阪神牝馬Sは昇級初戦。しかも2カ月半ぶりの実戦だった。1番人気を裏切る結果となったが、久々だったことを思うと、やはり本来の姿に戻っていなかったのだろう。それでも勝ち馬とは2馬身半差の6着(コンマ5秒差)。まともだったら──、と惜しまれる内容だった。
休み明けを一度使われた今回は実に雰囲気がいい。落ち着き払って好気配。1週前の追い切りもリズムに乗った軽快な動きで、陣営もヤル気をにじませる。
「使われて良化していることは間違いない。ひ弱さが消えてたくましくもなっている。東京コースに悪いイメージはない」
と、厩舎スタッフが口をそろえるほど。ならば、やれていいのではないか。
デビュー戦でスターズオンアースを破って勝ち上がった馬。祖母ワンデスタはサンタバルバラHなどGI3勝馬。血統的背景もよく、走りっぷりから道悪も不安はない。勝ち負けになるとみた。
逆転候補に挙げたいのはナムラクレアだ。前走の高松宮記念は2着。スプリンター色が濃そうに見られがちだが、ここにきて折り合い面で進境が見られ、末脚に磨きがかかっている。
「以前のように行きたがる面がなくなったのはいい。東京は初めてになるが、左回りはスムーズで、合うイメージ」とは、厩舎関係者の弁。
こちらは曾祖母クードジェニーがモルニー賞など仏GIを2勝している馬。折り合いを欠く場面があった桜花賞でもスターズオンアースにコンマ1秒差の3着に好走しており、成長著しい今なら、チャンスは十分あっていい。