近隣住民たちが、次々と戦慄の目撃談を明かす。
「5月上旬に団地内の公園で、少年が裕香さんの顔をボールでも扱うように激しく蹴っていました」(近隣男性)
「7月に団地の駐車場で『お前がおるから‥‥』と裕香さんがどなられて、殴られたり蹴られたりボコボコにされていた」(近隣女性)
暴力だけでは満たされなかったのか、A男は裕香さんを「性奴隷」のようにもてあそんでいた。中学時代の裕香さんの同級生がこんな証言をする。
「5月頃に私の友達が裕香さんに連絡すると、『A男にレイプされた』と相談を受けたそうです。命令に背くと虐待されるので従わざるをえないんです。裕香さんの他に少女が居候していた時は、2人でA男の相手をさせられたこともあったそうです。少女も暴力で支配され、仕方なくするしかなかった。逃げ出しても、A男は少年たちのネットワークを使って血眼になって探し出すので、結局連れ戻されるとも言っていたそうです」
窪田家の度重なる「異常事態」に、近隣住民たちは何度も警察や市に通報している。
7月18日には、住民たちの要請で伊予市職員が住民の話し合いに出席。「このままでは(裕香さんが)暴力で殺される」という話を聞かされている。またその翌日には、署員が恵容疑者に連絡を取ったが、
「一緒に住んでいた大野さんは1、2週間前に出ていった。どこにいるかわからない。こんなことで連絡してくるな!」
と一喝されて、それ以上、安否の確認はしなかった。そのおよそ1カ月後に最悪の結末を迎えてしまう。恵容疑者の幼少期を知る地元の男性は、かぶりを振りながら、こう語りだした。
「恵が生まれた直後ぐらいに、彼女の父親の兄が、恵の母親に手を出して夫から奪い取ってしまったんだ。以来、恵はこの兄に育てられてきたんだが、彼はキレやすくて暴力ざたや金銭トラブルは日常茶飯事で、飲食店やタクシーは『出入り禁止』。いちばん印象に残っているのは、地域の夏祭りで住民が盆踊りを踊っているところに、突然チェーンソーを持って現れ、やぐらの柱を切り落として祭りをメチャクチャにしてしまったことです。そんな男に育てられて『恵はちゃんと育つのか』と、当時から心配されていたよ。ニュースで恵の名前を聞いた時、悪い形で心配が当たってしまったと、やるせない気持ちになってなあ‥‥」
だが、いかなる境遇で育ってきたとしても、恵容疑者が時に実行し、時に黙認した、裕香さんを死に至らしめた残虐非道な所業は、いささかも許されない。