「ご心配をおかけして誠に申し訳ありませんが、単なる過度な酷使による声帯炎です」
ミュージシャンでT.M.Revolutionの西川貴教が5月9日にツイッターを更新し、5月7日に予定していた日比谷フェスティバル休演の理由をそう明かした。
西川といえば、2021年に新型コロナワクチンを接種したとSNSで報告した後に、2回目のモデルナ製新型コロナワクチンが異物混入ロットに当たっていたことが判明。同年8月に読売テレビ「ミヤネ屋」に出演し、副反応以外には健康被害が出ていないことを丁寧に説明した。その際に西川自身が、
「まじめにワクチンも接種し、前向きな発言や行動を取って、自粛も含め感染症対策もしっかりやってる人たちが全く報われない状態が続いてるような気がする。これ(異物混入)がホントに反発につながったり、変な形でワクチンに反感を持つ人が増えたりとか、変な方向にいくのが問題。報われるような形に、ワクチンパスポートとか推進していただきたい」
そう話したことがキッカケで、反ワクチンを説く電波系ネットユーザーに、2年間にわたり粘着されている。そのせいか、西川が症状を明かすまで、突拍子もない陰謀論が飛び交うことになった。それが「ワクチン打ったせいで休演」「ワクチン打ったせいでナゾの体調不良」「西川は体鍛えているからこの程度で済んだけど、病弱な人だったら命を落とす」「ワクチン打って宇宙人になった」「ワクチンを打って体が磁石になった」などだ。
ワクチンを打つも打たないも、個人の自由。だが、5月12日に全国ツアー千秋楽を控えていた西川の体調やワクチンについて悪質なデマを拡散したとなると、西川本人あるいは製薬会社から「名誉毀損」による「損害賠償請求」をされてもおかしくない。
事実、冒頭の投稿に続けて西川は「勝手に出自不明の陰謀論やワクチンと絡めた憶測はおやめください」「不安を拡散すべきではありません」と「電波系」にクギを刺している。
感染症の中には狂犬病や破傷風のように、ワクチン接種をしなければ「死に至る」恐ろしいものがある。5月に入り北陸、東京湾、九州と地震が相次いでいるが、大地震や津波から逃れる際、倒壊した建物や古釘、ガラスなどでケガを負った際に、被災者の命を最後に守っているのが、赤ん坊の頃に接種した破傷風ワクチンだ。
もし電波系の悪質なデマを鵜呑みにして、我が子に「防災ワクチン」である4種混合ワクチンを打たせていない親御さんがいたら、いつ来るかわからない大災害に備えて、どうか4種混合ワクチンだけは打たせて欲しい。
(那須優子/医療ジャーナリスト)