第96回全国高校野球選手権大会は、大阪桐蔭が深紅の優勝旗を手にした。過去7年で3度(センバツを含めれば4度)の甲子園制覇を達成している、常勝軍団の強さの秘密に迫る──。
大阪桐蔭は昨年秋の近畿大会大阪府予選4回戦で履正社にコールド負けし、今年のセンバツ出場を逃した。しかし、その履正社に春の大阪府大会でリベンジを果たし、そのまま近畿大会を制している。そして夏を迎えた。スポーツライターの飯山満氏が語る。
「昨年の屈辱をバネにしたうえで、西谷浩一監督(44)は“夏にピークを持っていけばいい”ということをよく理解しているから、今大会でも選手たちの実力を引き出せたのだと思います。予選では3年のエース・福島を3試合しか投げさせず、2年の田中に5試合任せましたからね。同時に、田中には来年、真のエースとなるよう種まきもした。2年前、センバツ後に藤浪晋太郎(20)=阪神=に右肘の炎症が発覚した時も、監督は『徹底的に走り込め』と指示して夏の予選までは試合で投げさせず、春夏連覇を達成しています。主戦を外す度胸があるんですね」
西谷監督は98年から同校で指揮を執り、春夏合わせて計10度の甲子園出場を果たしている。並行して、教え子からは数多くのプロ野球選手を輩出しているのだ。先にあげた藤浪以外にも、中村剛也(31)=西武=、西岡剛(30)=阪神=、平田良介(26)=中日=、中田翔(25)=日本ハム=、浅村栄斗(23)=西武=、森友哉(19)=西武=など、驚くほどスター選手ぞろいなのである。
その一方、西谷監督自身は報徳学園の出身だが、3年次に下級生部員の暴力事件が原因で対外試合禁止となって甲子園出場がかなわなかった過去がある。
「そうした経緯から、西谷監督はコミュニケーションを重視し、生徒に毎日ノートを提出させている。これは交換ノートの形式で選手の体調や資質を見抜いてアドバイスを添えることで効果を発揮していますが、そればかりか、部内で暴力やイジメがないか、その雰囲気を把握するのにも役立っているといいます。何かあれば生徒を叱りますが、激怒しすぎて選手が落ち込んだ時には『俺の太鼓腹触って元気出せ』と優しく励ますそうです」(スポーツ紙デスク)
ともに甲子園を目指す球児のスカウトにもみずから動くという。
「監督は社会科の教師でもありますが、土曜日に授業を外してもらって、西日本を中心にスカウト活動に励んでいる。その際は有望選手のいるボーイズリーグの監督らと“飲みニケーション”で密なネットワークを作っているそうです」(前出・スポーツ紙デスク)
ところが、そうして集めた素質のある選手たちを、決して「大阪桐蔭カラー」には染めようとしないというのだ。
「指導自体はオーソドックスですが、型にはめず個性を伸ばすので、その後の指導者から吸収する態勢も整っており、プロ入り後にグンと素質が伸びる選手が多いんです。中村はブルブル振り回していましたし、あの体型でしたが、それが許されて現在、稀代のホームラン打者になった。西岡も『何も教わってない』と高校時代を振り返っていましたね。西谷監督は天才の扱い方をよく知っているんです」(前出・スポーツ紙デスク)
今後も大阪桐蔭からスターが量産されそうである。