08年のドラフト会議で西武から3位指名され、入団。そのシュアな打撃と軽快な守備でチームの主力に成長した浅村栄斗。今や4番も任されることが多いが、そんな浅村は08年に大阪桐蔭が2度目の夏の甲子園優勝を果たした最大の殊勲者でもある。
最後の夏となった08年。浅村は1番・ショートで予選の北大阪大会に出場(この年は記念大会で大阪からは2代表が甲子園に出場出来た)。7試合で4割7厘、2本塁打、7打点を記録。4番に座る萩原圭悟と並ぶスラッガーとして大会前から高評価されていた。
その本番。初戦の日田林工(大分)戦から浅村のバットは火を吹く。第3、4打席で右へ左へ連続二塁打を放つなど、実に5打席連続安打をマークしたのだ。これは大会記録の1試合6安打にあと1本と迫る大活躍だった。打点も2を記録し、16-2とチームの大勝発進の立役者となったのだ。
2回戦の金沢(石川)戦は一転して苦しい試合となった。延長10回裏に6-5のサヨナラ勝ちを収めるのだが、1点差を追う8回裏2死から、2回裏に続くこの試合2本目となる起死回生の同点本塁打を放ったのが浅村だった。いずれも難しい内角球を左翼席に叩き込み、勝負強さを示したのである。
続く東邦(愛知)戦と報徳学園(兵庫)戦はともに4打数1安打。だが準決勝の横浜(神奈川)戦ではプロ注目の好左腕・土屋健二(元・DeNAなど)から3安打を放つなど、決勝戦進出の牽引役となったのだった。
その決勝戦。常葉菊川(静岡)という強敵相手にチームは17-0と大勝。この試合でも5打数3安打と活躍した浅村はこの大会で通算29打数16安打2本塁打4打点、打率5割5分2厘という高打率をマークした。中でも16安打はこれまでの大会記録19安打まであと3と迫る猛打ぶりだった。
打撃だけが目立ったが、守備でも軽快なプレーでチームを盛り立てていた。2回戦の金沢戦では10回表にセンターへ抜けようかという打球を好処理して一塁へノーバウンド送球。決勝の常葉菊川戦でも7回裏無死二塁で投手のグラブをかすめた打球を素早くバックアップし、三塁でアウトにする美技を見せている。プロ入り後は捕手を除く全ポジションをこなしている浅村の守備センスは高校時代から卓越したものがあったのだ。
(高校野球評論家・上杉純也)