北海道電力が昨年値上げしたばかりの電気料金の再値上げに向け、道内各地で住民向け説明会を開いている。ところがその内容たるや、みずからの経営努力は明確にせず、値上げの最大理由はコストが安い原発を稼働できないからだと言わんばかりの「上から目線」なのだ。怒りに震える道民を緊急直撃した!
北海道電力(以下、北電)が、経済産業省に電気料金の再値上げを申請したのは去る7月31日。 周知のとおり、福島第一原発事故の影響により、道内で唯一の泊原発(古宇郡泊村)は稼働停止。その後燃料費も高騰し、今年3月期の純損失は約630億円にも上る。3期連続の大幅な赤字により上場廃止の危機にあるとも言われる中、北電広報担当者が今回の値上げについてこう説明する。
「今年10月からの適用を要望し、適用後は規制部門(一般家庭)で17.03%、自由化部門(法人)で22.61%の値上げ率になります」
これは、昨年9月に行った電気料金の値上げ率(一般家庭で10.20%)を大幅に上回る。再値上げが認可されると、標準的な家庭の電気料金は、現在の月額7233円から8302円と、1069円も上昇。11年3月の東日本大震災前からは実に2125円もの値上げになる。北海道在住のジャーナリストが言う。
「全国的に見ると電力消費量は冷房などを使う夏場にピークを迎えますが、北海道は例外で、冬のほうが電力需要は大きく膨れ上がります。夏季と比べると、最大電力では約15%、電力量では約25%も増加。特に家庭での電力消費量は6割も増える。だから、これから冬を迎える時期の今回の再値上げは、道民にとって大きな打撃なんです」
そこで北電は再値上げの理解を得るために、8月23日に札幌や帯広など道内8カ所を皮切りに、順次説明会を開いているのだが、一般利用者の反応は冷ややかそのものだ。
「再値上げ申請の理由、内容などについて利用者の方々にご理解していただくため、9月5日まで、札幌、旭川、帯広など道内52会場で行います」(北電広報担当者)
事前の申し込みが必要なのにもかかわらず、道内各地の住民たちは説明会に殺到。それだけ再値上げに納得がいかない住民が多かったのだ。説明会を開いた側の北電は終始「上から目線」で、聞く耳をまったく持たず「庶民の声はまったく届いていない」という嘆きの声が、参加した住民たちから噴出しているという。
あらためて説明会に出席した道民たちを直撃すると、まず、小樽市の説明会に出席した同市在住の主婦(60代)が、こう振り返る。
「説明会の所要時間は90分ほど。まず冒頭の30分くらいで、北電の担当者から今回の再値上げの申請に至った理由や内容について説明がありました」
それは冒頭で触れたような泊原発の停止や燃料費の高騰を担当者が説明し、さらに、経営の効率化も図ったが値上げせざるをえなかったというものだった。
「この説明では値上げを回避するような根本的な解決策は何も示されなくて、そのことにも不満だったのですが、アキレたのはそのあと。省エネ対策のレクチャーがあったのですが、これが『照明はLEDやインバータ方式の省エネタイプに切り替えましょう』『パソコンは使わない時は消す』『冷蔵庫には物を詰め込みすぎない』『部屋を片づけてから掃除機をかける』など、子供でも知っているようなことばかり。値上げは既定路線であとは節電してくれと言っているような北電側のバカにした態度に、途中退席する人も少なくありませんでしたよ」(主婦)