社会

福島原発作業現場に外国人大量流入で地元がパニックに(2)行政は業者の雇用を把握しておらず…

20160324l3rd

 ただでさえ治安悪化におびえる住民の不安を、さらに増大させるようなことをするのだろうか──何より帰還者が増えないのだから市行政にとっても住民の不安解消は喫緊の課題であるはずだ。そこで直接、この問題について南相馬市役所危機管理課に問い合わせてみた。しかし、応対した男性職員からの答えは、思いもしないものだった。

「いやぁ、そんな話はこちらでは知らないんです。噂では聞いたことがありますが、デマかもしれませんよ」

 このことを佐藤氏に話すと、まったく違う説明を同じ部署から受けたという。

「中国人の姿を見かけた翌日、電話を入れました。これまで、さんざん問題が起きてるのに、これからさらに問題が起きたら、あなたたちは責任取れんのか? って。その時は外国人作業員が入ってくることを認めたうえで、『業者が勝手に入れているので、南相馬市では迷惑をしているんだ』という口ぶりでした」(前出・佐藤氏)

 そこで今度は環境省の出先機関である福島環境再生事務所に、どれだけの外国人除染作業員がいて、4月から増える見込みなのかを尋ねてみた。すると担当者はこう答えたのだった。

「こちらで外国人の方が働いているのは事実ですが、正確な数や国籍については、企業に任せていますので、把握していない。4月から増えるという話は聞いております。その中にどれだけ外国の方が含まれているかは把握しておりません」

 住民には正直に答え、取材には「デマ」とウソをつく──臭いものに蓋をして「原発安全神話」を作り上げたことと同じことが、今も続いているようだ。

「市は住民に帰ってこいと言ってます。そんな時に、外国人作業員がいっぱい入ってくるなんてことが知られたら、帰ってこようと思った人も思いとどまっちまうでしょ。だから、できるかぎりこのことについては広めたくないんでしょう」(前出・佐藤氏)

 原発事故関連での外国人労働者導入は、単に南相馬だけの問題にとどまらない。それは、事故処理そのものの「今」の問題点をあぶり出しているからだ。

 1つは「経済」の問題である。

「環境省が担当する地域は、まだまだ放射線量が高い帰還困難区域などが残っています。建設会社にしたら、外国人を使うことによって、安く抑えようという腹づもりなのでしょう。人件費を安く抑えることができることに尽きると思います」(建設会社社長)

 また、除染作業員の給与「ピンハネ」問題は深刻で、多くの労働者は宿泊費などの諸費用を天引きされる。約3万円支払われる日給は、作業員の手元には1万円しか残らない。高放射線量地域で作業して、危険手当がついても1万5000円前後だという。「ピンハネ」が問題化するリスクを少なくするためにも外国人作業員を、というのもうがった見方ではないだろう。

 今月9日、政府は除染の範囲を、これまでは対象となっていなかった里山まで広げると発表した。住民の感情をよそに、人員確保のためにも、福島で外国人除染労働者数が増加することは、現状を考えれば確定的となっていると言えよう。

ジャーナリスト:八木澤高明

カテゴリー: 社会   タグ: , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
2
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
3
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き
4
段ボール箱に「Ohtani」…メジャーリーグMVP発表前に「疑惑の写真」流出の「ダメだ、こりゃ!」
5
巨人が手ぐすね引いて待つ阪神FA大山悠輔が「ファン感謝デー」に登場する「強心臓」