イギリスでクローン羊「ドリー」が誕生したのは、1996年。それから27年の歳月が流れ、その間にクローン技術は目まぐるしく進化を遂げた。そして現在、世界の富裕層の間で、ペットとして可愛がっていた犬や猫などを死後にクローンとして蘇らせ、販売するビジネスが大盛況なのだという。サイエンスライターが語る。
「このビジネスの先駆者として知られるのが、韓国ソウル市内にあるスアム生命工学研究所です。06年の設立以降、すでに1000を超えるクローン犬を製造し、販売している。おおよその費用は1頭10万ドル(約1100万円)で、死後5日以内にDNA提供があれば、5カ月以内に『生まれ変わり』を用意できる…そんなうたい文句で、世界各国のセレブから注文が殺到。それに中国の企業が追随し、ビジネス市場を形成しているといわれます」
通常、クローン製造のためには、死後1週間以内の犬や猫の皮膚などから体細胞を採取し、抽出したDNAを卵子に入れて、代理母となる犬や猫の子宮に移植するという手順がとられる。受注から引き渡しまでの目安は、10カ月程度だ。だがこの研究所では、その半分程度の期間で受け渡しまで完了できるという。
とはいえ、クローン製造における成功率は高くなっているとされる一方、まだまだ代理母が流産する割合は高いため、必然的に複数の雌が必要になる。
「つまり1匹を生み出すために、その数倍の代理母を用意しなければならないのです。クローン動物については、世界各国で文化や宗教観の違いもあり、現段階では明確な規制や国際的ルールが定まっていません。なので、金さえ払えば何でもできるのか、といった批判の声も大きい。さらに一番の問題点は、死んだペットを蘇らせるために、その過程でも多くの命が失われる危険性があること。すなわち、命の根幹を崩壊させる懸念があるのです」(前出・サイエンスライター)
現在、韓国や中国企業に対し、日本からも相当数の依頼があると言われる。人間と動物の、命との向き合い方が問われている。
(ジョン・ドゥ)