鹿児島県奄美大島や沖縄県などで今年4月、強い毒性を持つ「カツオノカンムリ」というクラゲの漂着が確認され、各自治体で注意喚起を行ってきた(写真)。ところが現在もその数が増え続けていることから、夏休みの海水浴シーズンを前に、不安の声が広がっている。
海洋生物の研究者によれば、カツオノカンムリは外洋性で、主に黒潮海域に生息。カツオの群れと一緒に見つかることが多いことから、こう命名されたというのだが、
「体全体が透き通った青色の楕円形で、三角形の透明な帆で風を受けて、海面付近を漂っている。刺されると、激しい腫れや痛みを引き起こします。普段は黒潮海域にいるため、めったに浅瀬に来ることはないのですが、潮の流れや風向きによって集団で沿岸に流れてくる場合もある。毒性が強いため、海水浴場では注意喚起し、場合によっては遊泳禁止になるケースもあります」
だが世界には、カツオノカンムリの毒など足元にも及ばぬほど強力な毒性を持つクラゲが、数多く存在する。史上最強と言われるのは、インド洋南部からオーストラリア西方近海に生息するオーストラリアウンバチクラゲ、通称「キロネックス」だという。前出の海洋生物研究者が解説する。
「キロネックスが持つ毒性は地球上で最強とされ、触れた小魚や甲殻類を一瞬で殺し、捕食することで知られます。当然、人間がこのクラゲに刺されると壮絶な激痛に見舞われ、10分以内に呼吸困難、心停止などで、間違いなく死に至ります。しかも昼行性で傘が半透明のため水中では確認しづらく、気が付くと刺されていた、というケースが少なくない。まさに知らない間に忍び寄る、サイエンスキラー。それがこのクラゲの恐ろしさなんです」
オーストラリア各地の海岸では、この「殺人クラゲ」対策として、周辺に防護ネットや金網を張って侵入を防いでいる。それでも毎年夏になると刺傷による死亡事故が絶たず、自治体を挙げてその対応に苦慮しているのが実情だ。
いよいよ夏休みシーズン到来。バカンスを利用してオーストラリア旅行に出かける日本人は少なくないだろうが、ビーチで遊ぶ際は、殺人クラゲに細心の注意を払わねばならない。
(ジョン・ドゥ)