オークス、ダービーが終わり、新たなページがめくられ、2歳馬がデビューする、その時に行われるのが安田記念。6月最終週の宝塚記念と同じく、中央競馬の前半戦を締めくくる伝統あるGI戦だ。
先日のNHKマイルカップやヴィクトリアマイルと同様、直線の長い東京での芝のマイル戦。まぐれが少ない力どおりの決着になってもいいが、意外や意外、人気どおりに一筋縄では収まらないことが多い。
それだけマイル戦を得意とする質の高いマイラーが多いということだろうが、2歳馬がデビューし、3歳馬が4歳以上の古馬と一緒に走る番組体系によるところも要因だろう。背負う斤量の差もあり、各馬の力を見極める作業は、そう簡単ではない。
いずれにせよ、波乱含みのGI戦であることはデータが示している。
03年に馬単が導入されて以降、これまでの20年間、その馬単での万馬券は11回(馬連は7回)。この間、1番人気馬は4勝(2着3回)、2番人気馬は3勝(2着2回)。1、2番人気馬によるワンツー決着はわずか1回。安直に手を出しづらい、馬券的には難解なGI戦と言ってよさそうだ。
3歳馬と古馬が同じステージに上がって戦う、その幕開けだけに難しいわけだが、現時点で出走可能な3歳馬は、NHKマイルCを制したシャンパンカラーと、昨年度の最優秀2歳牡馬に輝いたドルチェモア。
とはいえ、古馬勢もほとんどが重賞勝ち馬でGI馬が10頭と顔ぶれは多彩。フルゲートに加えて各馬の力量が紙一重なだけに、今年もどう転ぶか予断を許さない、とにもかくにも悩ましい一戦である。
悩むところだが、最も期待を寄せてみたいのは、ナミュールだ。阪神JF4着、オークス3着、秋華賞2着と、まだGIを手中にしていないが、GI戦に挑戦すること6回。いずれも勝ち馬とそう差のない競馬をしており、地力は十分にGI級のものがある。
前走のヴィクトリアMは、ソングラインの7着に敗れたが、向こう正面で大きな不利を被ってのもの。それでも3馬身半ソコソコ(コンマ6秒)しか差がなかったことを思えば、断じて軽くみるべきではない。
しまいの鋭い脚が持ち味だけに、不利を受けるなどスムーズな競馬ができないリスクが毎度あるのはやむを得ないところだが、3カ月ぶりの実戦を使われて、馬の状態、雰囲気がすごくよくなっている。レース間隔が詰まっているため、この中間は軽めの稽古に終始しているものの、動きは相変わらず軽快だ。
「とにかく順調。左回りはスムーズで、東京の舞台は合う」と、厩舎スタッフも口をそろえるほど。
勝ち鞍の3勝はいずれもマイル戦ということを考えれば、巻き返しも十分。曾祖母キョウエイマーチは桜花賞馬で重賞4勝の女傑。血統的背景からも強敵相手のここでGI初制覇があってもいい。
相手はシュネルマイスターなど人気どころになるが、穴としておもしろい存在は、ソウルラッシュだ。
有力勢と比べると血統背景は見劣るものの、マイル戦は〈4 1 1 2〉と得意中の得意にしている。1勝クラスから昨春のGIIマイラーズCまで、マイル戦のみで4連勝を飾ったことは特筆していいだろう。
今春のマイラーズCでも5カ月ぶりの実戦をものともせず、勝馬とコンマ1秒差の3着。休み明けを使われたことでこの中間は大幅な良化ぶりをみせており、“一発”があっても不思議はない。