近年、大腸ガンの患者数が増加している。1年間で15万人程度が罹患しているが、年齢別では40歳から年を重ねるにつれ増える傾向にあると言われている。
大腸ガンは、大腸(結腸・直腸)に発症するガンだ。主な自覚症状は、便に血が混ざる血便だ。進行すると、慢性的に出血することによる貧血、腸が狭くなることによる便秘や下痢、便が細くなる、残便感、お腹が張るなどの症状が現れる。さらに進行すると腸閉塞となり、便が出なくなり、腹痛や嘔吐などの症状を発症する。早期の段階では自覚症状がないことがほとんど。進行してからようやく症状が現れることが多い。
大腸ガンは早期の段階で治療を行えば、高い確率で完治が可能だ。そのため、定期的な検診を受けることが何よりも重要とされる。ところが、日本人の大腸ガン検診の受診率は、欧米と比べてかなり低いことが指摘されているのだ。
一般的に、大腸ガンの一次検診は「便潜血検査」で行われる。これは、採取した2日分の便を提出し、便に血液が混じっていないかどうかが調べられ、2回のうち1回でも陽性になれば「要精密検査」となる。
精密検査が必要となった場合は、最も精度が高い「大腸内視鏡検査」が行われるケースが多い。これは、内視鏡を肛門から挿入し、大腸の粘膜の様子を調べる検査。病変が見つかった際は、組織を採取して調べたり、その場でポリープや早期ガンを切除したりする場合もある。
現在、日本での大腸ガン検診は、市町村などの行政が関与する住民検診、企業の職域検診、人間ドックなど、様々な形で広く行われている。検診の対象となる年齢は、リスクが高まる40歳以上だ。少なくとも年に1回は、大腸ガン検診を受けることが望ましいだろう。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。