日本人の3人に1人が悩んでいると言われる「痔」。早めの治療で治る病気だが、恥ずかしさや抵抗感から病院に行く人が意外に少ない。
市販薬で治療できる場合もあるが、1~2週間使用しても治らない場合や、出血がある時は大腸ガンなどの可能性もあるので、「肛門科」を受診したほうがいいだろう。
というのも厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」(2016年)によれば、肛門診療をしている医師は全国に4000人以上いる。ところが肛門外科(肛門科)を専門にしている医師は1割程度にすぎない。中には痔の手術経験がほとんどない医師もいるほどだ。
痔には、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろう(あな痔)の3種類があり、痔核の患者が最も多い。「内痔核」は、肛門の内側がうっ血してイボ状に膨れ上がり、痛みを感じることは少ない。症状が軽ければ軟膏や座薬を使って様子をみることが多いが、痔核が大きくなると排便時に肛門の外に出るようになり(脱肛)、指で押し込まないと戻らない状態になれば手術の必要も出てくる。
「外痔核」は肛門の外側にできて痛みを伴う。特に、急に出現して強い痛みを伴う「血栓性外痔核」は肛門の内部に血の塊ができ、普通は自然に消失するが、場合によっては切開して血の塊を取り除くことになる。
痔核の主な原因は便秘だ。硬い便を出すために強くいきむことなどが引き金となり、肛門周辺の血液の循環が滞り、うっ血を起こしてイボができる。トイレ以外でも、長時間立ち続けたり座り続けたり同じ姿勢を長く続けるのも、血流が悪くなり肛門に負担がかかる。
痔は排便習慣や食生活の改善と薬によって、症状が改善するケースが多い。食物繊維を多くとるなど食生活の改善や、駅の階段を使って運動不足を解消。エアコンなどで体を冷やしすぎない、ストレスをため込まない生活を心がけることが重要だ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。