日本人の3人に1人が患っているという「痔」。つい、放置してしまいがちだが、診察の目安は「市販薬を使用して悪化した」「市販薬を1~2週間使用しても改善しない」「出血がある」など。こうした症状に気づいたら、大腸ガンなど別の病気の可能性もあるので、早めに医療機関を受診したほうがいい。
痔の手術については判断目安を3カ月としている医師もいる。肛門の粘膜が新陳代謝によって2カ月ごとに新しく生まれ変わるからだ。生活習慣の改善や投薬により粘膜が修復され、炎症による腫れは2カ月程度で治まる。中には、生活習慣を変えるだけで、3カ月程度ですっかり改善する人もいるという。なお、痔の手術は医師の腕によって痛みや予後が大きく異なってくるので「痔を専門とする医師」を選ぶことが重要だ。
厚生労働省の「医師・歯科医師・薬剤師調査」(16年)によると、肛門診療をしている医師が全国に4000人以上いる中で、肛門の手術経験がある肛門外科(肛門科)を専門にしている医師は1割程度しかいない。そのため「日本臨床肛門病学会」が18年に「技能認定制度」を開始。「日本臨床肛門病学会」のサイトでは、肛門病の診療に熱心に取り組んでいる医師を審査・認定し、紹介しているので参考にしたらいいだろう。
日頃の予防やセルフケアも重要だ。まずは朝の過ごし方に気をつけたい。朝の排便習慣をつけるために、ゆとりを持って起床。そして、コップ1杯の水をゆっくりと飲み、朝食をしっかりとる。水分・食物繊維をしっかりとることも忘れずに。
最も大事なのは、肛門を清潔に保ち、便意がない時はトイレで無理にいきまない。排便は長くても3分間におさめることを心得ておいてほしい。ストレスや飲酒、運動不足などから便秘や下痢を起こし、痔につながるケースも多いので、根本的な要因を取り除く工夫も心掛けたい。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。