──増税の口実に使われてきた「国の借金」がまやかしだったとは‥‥。
森永 ザイム真理教はみずから作り上げた「財政均衡主義」という教義のもと、事あるごとに増税や社会保険料の負担増などで、国民負担増を図ってきました。国民所得全体のうち、税金と社会保障負担が占める割合を国民負担率と言います。私が社会に出た1980年度は約30%でしたが、10年度は37.2%。それが22年度には47.5%と、ほぼ5割にまで達しています。これはいくら働いても、およそ半分が税金と社会保険料で持っていかれる計算です。しかも実質賃金は90年代から右肩下がり。給料は増えないのに、負担ばかり増えては真面目に働くのもバカらしくなりますよ。
──もしや江戸時代の年貢の取り立てよりもひどい?
森永 江戸時代の初期は四公六民といって、農民は収穫した米の4割をお上に納めればよかった。それが享保以降に五公五民になると、農民も生活に窮して一揆に出るか、『逃散(ちょうさん)』と言ってどこかへ逃げるしかありませんでした。このことから国民負担率は50%が限界と見るべきですが、これから先、ザイム真理教が100%の負担率を強いてきても不思議ではありません。すべての収入を搾り取るばかりか、100%を超えて国民の資産にまで手を伸ばしかねない。そうなると、土地や家を売らせてまで献金をせびる、どこかのカルト教団と変わりません。
──それは恐ろしい!
森永 この30年間、日本経済が停滞した理由について、やれ企業のイノベーション云々とか、構造改革の遅れとか御託を並べる人がいますが、原因は明らかに消費税ですよ。1988年度と21年度の家計を比較すると、世帯主の収入は増えているのに、消費税を含む税社会保険料を差し引いた手取りは年間で18万円も減少しています。これは89年4月に導入され、段階的に引き上げられてきた消費税が原因。使えるお金が減れば、消費も減るし、企業が儲からなければ賃金も上がらない。経済が成長するわけがありません。