石川啄木が歌集「一握の砂」を発表してから110余年、働けど働けど楽にならざる増税時代に刊行されたのが「ザイム真理教──それは信者8000万人の巨大カルト」だ。著者で経済アナリストの森永卓郎氏が、テレビでは紹介されない「禁書」を手に、増税の黒幕・財務省のタブーを暴く。
──話題の新刊「ザイム真理教」(三五館シンシャ)がバカ売れしていると聞きました。
森永卓郎 おかげ様で発売から1週間で4刷が決まり、部数も2万3000部に到達しました。「書店に行ったけど売り場にない」という声をいただきますが、増刷分がそろそろ配本されるので今しばらくお待ちください。これだけ売れているのに、取り上げてくれる雑誌は「アサ芸」さんくらいですよ。テレビも大手新聞社もダンマリ。まあ、この本では大手新聞社と財務省の癒着ぶりもしっかり書いているので、仕方ないと言えば仕方ないのですが(笑)。
──本を出したきっかけは、長男で経済アナリストの森永康平氏だったとか?
森永 以前、息子がやっているYouTubeに出演した時に「ザイム真理教」という言葉がネットで流行っていることを聞いて、「これは素晴らしい表現だ」と思い立ち、昨年の年末から年始にかけて2週間で一気に書き上げました。これまで出版社から依頼されたものを含めて100冊以上の本を書いてきて、その大半が増刷しているので、きっとどこかの社が手を挙げてくれると思ったら、「財務省批判」がテーマの本だと言った途端、大手出版社からはすべて断られて‥‥。諦めかけていたところで社長が1人で切り盛りする三五館シンシャという出版社が引き受けてくれたんです。
──大手メディアがタブー視するザイム真理教の教義とは?
森永 わかりやすく言うと、実質的には借金なんて抱えていないのに、「借金で首が回らない」「このまま借金が増えれば破綻する」などと国民を脅して、税金や社会保険料を増額するよう、“布教活動”を行っているのです。実際、20年度末に財務省が公表した数字を見ると、日本は1661兆円もの借金を抱えています。ところがそれと同時に、政府は有価証券や土地、建物など1121兆円という莫大な資産を保有していて、これを差し引けば540兆円。さらに通貨発行益を加えると、実質債務はわずか8兆円にまで圧縮されるのです。しかも現在の岸田政権は財政緊縮を徹底していて、21年度から予算ベースで28兆円も削減している。細かい数字が出るまで、あと2年くらいかかるので断言はできませんが、すでに日本政府は借金どころか、預金を持っているという状況になっているかもしれません。