先に指摘した通り、脳の働きの活性化にはブドウ糖が大きく影響を与えるが、
「フルーツに含まれる果糖は、ブドウ糖よりも早くエネルギーに変換されます。藤井さんは、おやつだけでなく飲み物からも果糖を摂取しているのは一目瞭然でしょう」(川上氏)
対局は10手20手と先を読み合う頭脳のぶつかり合い。脳内では常人には想像しがたいほどの糖分が大量消費されているのだろう。また、川上氏はこうも指摘する。
「藤井さんは午前中のおやつにアイスコーヒーを頼む確率が非常に高いです。集中力を高める極限の場で、無意識にカフェイン欲が働いているのかもしれません。そして昼食時や午後のおやつでは、対照的に紅茶を頼まれている。実はカフェインの含有量は、コーヒーよりも紅茶のほうが多い。対局の後半戦でより覚醒できる選択と言えるでしょう」
調べると、全30日で「朝コーヒー」は22回、「午後の紅茶」は17回にも及んでいる。対局終盤の午後ティーで、スッキリ明晰な頭脳に切り替えて、仕留めにかかっているのだろうか。
「朝昼のおやつでは、卵や抹茶を使ったスイーツが多いことにも要注目です。卵は脳と神経の健康に欠かせないコリンがたっぷりで、重要な神経伝達物質のオメガ3や基礎代謝を支えるビタミンB群も豊富。抹茶は脳内ストレスを抑制するGABAの活性を高め、α波の活動を増加させるL-テアニンが豊富で、主要成分のカテキンも、脳を酸化ストレスから守り、記憶力や学習能力を改善する働きがあります」(川上氏)
極め付きが、各地で名産となっている「ブランド牛」との相性だ。「掛川牛の麻婆豆腐定食」(1月8日・王将戦第1局)、「佐賀牛の陶板焼き」(3月11日・王将戦第6局)、「短角牛のローストビーフ丼」(5月28日・叡王戦第4局)と、地産のブランド牛料理を食べた対局は負け知らず。いずれも勝利しているのだ。
「脂肪を適度に含んだ、いわゆる『いい肉』を食べると、ストレス軽減やリラックス効果があります。ブランド牛の質のいい脂が勝利の一助になっているのでは?」(川上氏)
前人未到の「八冠」に向け、今後も全国に「勝利メシ」を広めてほしい。