次の総選挙を睨み、林芳正外相と安倍晋三元総理の昭恵夫人のバトルが熾烈さを増している。
背景を山口県議会議員が解説する。
「衆院選挙区の『10増10減』に伴い、山口の選挙区は次の選挙で4から3に減る。この減区により安倍元総理が地盤としてきた下関市、長門市の現4区が新3区に組み込まれることから、事が複雑となる。新3区の自民候補は本来、安倍元総理で決まりだったが、急逝により情勢が一変。現3区の林外相が新3区からの出馬を望んでいると言われるためだ」
林外相が新3区出馬を熱望する理由には、林家の歴史が絡む。父の義郎元蔵相らは、もともと現4区の下関市が拠点。そのため中選挙区時代は安倍元総理の父・晋太郎元外相らと激しく戦い「下関戦争」と呼ばれた。しかし1994年、現在の小選挙区比例代表の導入時、義郎氏は安倍家に小選挙区を譲って参院に鞍替えし「棲み分け」してきた経緯がある。
「だが、林外相としては安倍氏の急逝で本家本元の新3区下関市に戻り『ポスト岸田』に駆け上がりたいというのが本音だ」(前出・県議会議員)
そこに立ちはだかるのが安倍元総理の昭恵夫人だ。
「昭恵さんは4月の4区補選では元下関市議の吉田真次氏を後継に担ぎ当選させている。だが次の選挙は減区で4区は新3区となる。そこで吉田氏を新3区の自民党候補とするため動き始めているんです」(前出・県議会議員)
自民党関係者も昭恵夫人の動向を以下のように説明する。
「自ら吉田氏の後援会長を買って出て、さらに党本部に出向き吉田氏を新3区候補者とするよう、茂木敏充幹事長に直訴した。岸田総理は右腕の林外相を新3区候補に望んでいるとされ、吉田氏の新3区支部長は厳しいと見られる」
地元の自民党幹部は言う。
「仮に新3区候補者が林外相となれば、吉田氏を比例で処遇することも考えられる。だが昭恵さんはそれでは納得せず、吉田氏を無所属で林氏にぶつけてくる可能性もある。安倍元総理の後援会も吉田氏の当選で一度は解散の方向となったが、仮に次の選挙で昭恵さんが吉田支援でマイクを握ればどうなるか」
吉田氏が安倍後継とはいえ、こうなると実質は昭恵夫人VS林外相の構図だが、
「いっそ次の選挙は吉田氏に代わり昭恵さんが出馬すれば分かりやすいという声さえ出ている」(県議会関係者)
「新・下関戦争」となるか。
(田村建光)