財務省幹部が明かす。
「14年に内閣人事局が設置されて以降、官邸が事務次官や局長などの幹部人事に介入するようになった。財務省も例外ではなく、省益を守りたければ、あるいは出世をしたければ、官邸の意向には逆らえない。事実、加計学園問題では、官邸にたてついた文部科学事務次官が役人生命を絶たれている。官邸主導、政治主導と言えば聞こえはいいが、実態は官邸の意向が『ご無理ごもっとも』でまかり通るようになったということだ」
そして、財務省本省が捨て身で仕掛けた第二の自爆テロは、財務相として同省を率いる麻生氏の怒りの導火線にも飛び火していったというのだ。再び麻生派有力議員の証言。
「麻生氏にはコワモテでとっつきにくい印象があるが、実際には親分肌で部下の面倒見もいい。財務相であるという以外、自分には関わりのない森友疑惑にしても、副総理という立場から安倍総理と安倍政権を支えてきた。ところが、安倍総理と菅官房長官らの意向を受ける形で佐川氏が事実上の更迭に追い込まれていったあたりから、麻生氏の表情はしだいに険しくなっていった。麻生氏としては『役目とはいえ、なんでオレが佐川にクビを宣告しなければならないんだ』との思いがあったんでしょう」
しかも、この更迭劇を受け、野党どころか与党の一部からもにわかに湧き起こった「財務相を辞任すべき」の大合唱が麻生氏の怒りを決定的なものにしたという。この有力議員が続ける。
「安倍総理は『麻生氏は辞任させない』と言っているが、麻生氏はこれが独特の政治用語であることを知っている。『こう言っておいて泣いて馬謖を斬る』は、政界ではよくあるパターンだからだ。それだけに、麻生氏の腹の中では今、『オレのクビを切って、安倍と菅が生き残る? そんな身勝手はオレが許さない』との怒りが燃えたぎっている。そもそも、森友疑惑の種は安倍総理と昭恵夫人がまいたもの。この間、尻ぬぐい役をさせられてきた麻生氏だけに、『フザけるな、お前のせいだろ!』とばかりに、怒りに震えていると‥‥」
財務省が文書の改ざん、偽造を認めた3月12日、麻生氏は報道陣のブラ下がり会見に応じたが、その表情には内心の不機嫌さが露骨に表れていた。マスコミはその言動も含めて「傲慢会見」と報じたが、不機嫌さの本当の理由は安倍総理らに対する怒りにあったのだ。
そんな中、官邸や自民党の一部からは「麻生氏を副総理として残す」との奇策も浮上しているが、麻生氏と親しい自民党の執行部経験者は次のように断言してはばからない。
「そんな子供だましの奇策では世論も納得しないし、官邸への不信感を募らせている麻生さんも乗らないだろう。官邸は『今後の内閣支持率を見て』と考えているようだが、状況は悪化する一方で、麻生さんの財務相辞任は必至の情勢だ。となれば、麻生派の動き一つで安倍さんが目指している総裁3選はきわめて危うくなってくる。世論しだいでは9月の総裁選を待たずに安倍政権が総辞職に追い込まれる、という大政局に発展する可能性もある」
安倍総理自身が2年前の年頭所感でいみじくも語ったように、まさに「築城3年、落城1日」の危機が目前に迫っているのだ。