エンゼルスの大谷翔平がホームランと奪三振の山を築けば、レッドソックスの吉田正尚が連日のマルチヒットで首位打者争いに名乗りを上げる。今まさに、米球界で日本人選手が赤丸急上昇中。次なるプロスペクトを求めて、メジャーの極東スカウトがNPBに一極集中しているのだ。そこで値踏みされたメジャー候補たちの最新査定とは──。
目下、オリックスの山本由伸(24)は海の向こうから絶え間ないラブコールを送られている。2年連続で最優秀防御率、勝率1位、最多勝利、最多奪三振の投手主要4タイトルのみならず、沢村賞、パ・リーグMVPを獲得。名実ともに日本球界の大エースに君臨するが、すでにその視線の先は米球界をしっかり見据えている。スポーツ紙デスクが解説する。
「今オフのポスティング移籍が既定路線です。すでに水面下では渡米に向けた準備が着々と進められていて、昨オフには懇意にしていた球団職員を個人マネージャーに雇っている。もともとオリックスはエースのメジャー流出に消極的でした。21年の契約更改で越年したのもメジャー挑戦を巡る山本と球団の落としどころが不調に終わり、結論を出せなかったからだといいます」
そんな球団の態度がガラっと軟化したのは昨オフのこと。スポーツ紙デスクが続ける。
「明らかに、レッドソックスに移籍した吉田正尚(29)の譲渡金で目の色が変わりました。なんせ約21億5000万円の臨時収入ですからね。これまでオリックスから吉田に支払われた契約金と年俸は、7年間でせいぜい13~14億円程度。それだけ大きな黒字を残すことになる。同様の“置き土産”に期待して山本のポスティング移籍にもGOサインが出たのです」
もはや、譲渡金が発生しない海外FA権を待つ選択肢はない。そこで気になるのは山本の市場価値だが、大リーグ評論家の友成那智氏は「メッツの千賀滉大(30)より評価が上」と前置きしてこう続ける。
「ファストボールとスプリットの制球力がズバ抜けている。『K/BB』というコントロールの指標で、昨季の千賀が3.18だったのに対して山本が4.88を記録。あくまで参考記録にすぎませんが、山本の数字はメジャーでもトップクラス。そして故障による長期離脱がないのも加点項目です。千賀は5年1億ドル以上(総額、以下同)の契約を見込んでいたのに、メディカルチェックに引っかかって7500万ドルまで買い叩かれてしまった。頑健な山本なら5年1億2000万ドルの契約は固いでしょう」
高評価を受けて、獲得に意欲を見せる米球団は引きもきらない。スポーツ紙遊軍記者が語る。
「山本が登板する試合には、常に7~8球団のスカウトが視察に訪れています。その筆頭格がドジャースです。WBCの宮崎合宿でも、編成部門トップを含む4人体制で山本の状態をチェックしていました。打者がタイミングを取りづらい“クイック風”の新フォームも大好評。すでに評価はエース候補で、かつて楽天の田中将大(34)がヤンキースと契約した7年1億5500万ドルを超える条件を用意しているといいます」
とはいえ、いかに好待遇を引き出せるかどうかは代理人次第。その成否を左右するビジネスパートナーの選定が難航しているようなのだ。
「そもそも、オフの自主トレ仲間であったレンジャーズ・筒香嘉智(31)とのつながりでワッサーマンから代理人を立てる流れでした。ところが、東京五輪の談合事件に関わっていた電通との結びつきの強さから、距離を置くようになってしまった。現在は、複数のエージェント会社を競わせて条件を見定めている状況です」
剛腕代理人をパートナーにして、まだメジャーで1球も投げていない投手の最高契約額の更新なるか。