社会

「秀吉」を名乗った幕末の「エキセントリックな殺人芸妓」が異常な人気を得るまで

 これは理由なき殺人なのか──。

 幕末から大正時代にかけて、豊臣秀吉にあやかり「秀吉」と名乗っていた芸妓がいる。川口松太郎の小説「明治一代女」のモデルとなった、花井お梅だ。本名はムメという。

 この「明治一代女」はのちに脚色され、1935年(昭和10年)に大ヒットした歌謡曲「明治一代女」、1959年(昭和34年)に勝新太郎らが出演した映画「情炎」などの題材になった。

 お梅は15歳で柳橋の芸妓小秀となり、18歳で新橋へ移ると、秀吉を名乗った。美貌で気っぷのいい新橋芸妓として人気は高かったが、エキセントリックな性格に加え、酒乱だったという。

 美貌を武器に銀行の頭取に身請けされ、浜町に待合「酔月(酔月楼)」を持たされて主人になった。絵に描いたような玉の輿だが、歌舞伎役者の4代目・沢村源之助に入れあげたのが、運の尽きだった。この源之助は江戸最後の女形といわれ、錦絵にもなったほどのイケメン役者である。

 2人の関係はたちまち世間に知られることとなり、大トラブルに。この一件でワリを食ったのが、源之助の付き人・八杉峰三郎だった。

 哀れに思ったのか、お梅は峰三郎を自分が座敷に出る際に、三味線の入った箱を持たせる箱屋として雇った。ところが1888年(明治21年)6月9日、お梅は事件を引き起こす。浜町河岸で峰三郎を刺してしまったのだ。峰三郎はその場は逃げ延びたが、のちに死亡。お梅は元佐倉藩の下級武士だった父親に連れられて自首するも、動機は今現在も明らかになっていない。「ほんのはずみ」説が有力だ。

 お梅は無期懲役となったが、刑期中もその動向は話題になった。釈放されたのは15年後の1903年4月。40歳になっていたが、出獄を見ようとヤジ馬が殺到したため、時間を早め、裏口から出されたという。

 9月には今の台東区千束に汁粉屋を、神田須田町付近に洋食屋を開店。お梅見たさに一時、客が集まったが、長く続かず、店じまいしている。1916年(大正5年)夏、新橋で秀之助と名乗り芸妓に戻っていたが、その年の12月13日、肺炎のため世を去った。53歳だった。

(道嶋慶)

カテゴリー: 社会   タグ: ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    なぜここまで差がついた!? V6・井ノ原快彦がTOKIO・国分太一に下剋上!

    33788

    昨年末のスポーツニュース番組「すぽると!」(フジテレビ系)降板に続いて、朝の情報番組「いっぷく!」(TBS系)も打ち切り決定となったTOKIOの国分太一。今月30日からは同枠で「白熱ライブ ビビット」の総合司会を務めることになり、心機一転再…

    カテゴリー: 芸能|タグ: , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<寒暖差アレルギー>花粉症との違いは?自律神経の乱れが原因

    332686

    風邪でもないのに、くしゃみ、鼻水が出る‥‥それは花粉症ではなく「寒暖差アレルギー」かもしれない。これは約7度以上の気温差が刺激となって引き起こされるアレルギー症状。「アレルギー」の名は付くが、花粉やハウスダスト、食品など特定のアレルゲンが引…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , , |

    医者のはなしがよくわかる“診察室のツボ”<花粉症>効果が出るのは1~2週間後 早めにステロイド点鼻薬を!

    332096

    花粉の季節が近づいてきた。今年のスギ・ヒノキ花粉の飛散量は全国的に要注意レベルとなることが予測されている。「花粉症」は、花粉の飛散が本格的に始まる前に対策を打ち、症状の緩和に努めることがポイントだ。というのも、薬の効果が出始めるまでには一定…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , , |

注目キーワード

人気記事

1
上原浩治の言う通りだった!「佐々木朗希メジャーではダメ」な大荒れ投球と降板後の態度
2
フジテレビ第三者委員会の「ヒアリングを拒否」した「中居正広と懇意のタレントU氏」の素性
3
3連覇どころかまさかのJ2転落が!ヴィッセル神戸の「目玉補強失敗」悲しい舞台裏
4
巨人「甲斐拓也にあって大城卓三にないもの」高木豊がズバリ指摘した「投手へのリアクション」
5
ミャンマー震源から1000キロのバンコクで「高層ビル倒壊」どのタワマンが崩れるかは運次第という「長周期地震動」