社会

戦国武将に学ぶ「ビジネスに効く名言」15(3)「五常」の実践もほどほどに

「首刎(は)ねらるる期(とき)までも命を惜しむは、本意を達せんがため」(石田三成)

 秀吉に重用され豊臣家臣団一の実力者だった石田三成が、関ヶ原の戦いで敗北し捕虜となった時、なぜ自害せずに捕虜となったのか、と罵倒されて答えたのがこの言葉だ。みずから死を求めるのは意味がない、本意を遂げるまで命を長らえて戦い続けることを説いている。ここで「首刎ねらるる」というのは、現代の馘首(かくしゅ)(クビ)ということではないが、早期退職勧奨などがあった時、みずから進んで身を引くのは敵の思うつぼ。格好悪くても、会社にしがみつき、自分のやるべき仕事を全うするべきじゃないだろうか。そんな戦い方もあると気づかせてくれる名言である。

「死なむと戦へば生き、生きむと戦へば必ず死するものなり」(上杉謙信)

 越後の龍と呼ばれ、好敵手・甲斐の武田信玄とは5回に及ぶ川中島の戦いを繰り広げた上杉謙信の言葉。みずからを毘沙門天の化身と信じ、領土的野心からではなく、義と人情を大切にしていたことと無縁ではないような名言だ。謙信は、儒教の教えにある「仁・義・礼・智・信」を大切にしていたというが、東北を支配した伊達政宗は、次のような言葉を遺している。

「仁に過ぎれば弱くなる。義に過ぎれば固くなる。礼に過ぎればへつらいとなる。智に過ぎれば嘘をつく。信に過ぎれば損をする」(伊達政宗)

 仁(人や身内に対する愛)、義(正しい道、正義)、礼(礼儀、礼節)、智(善悪を判断する知恵)、信(嘘のない言行による信用)というのは、中国古代の孔子、孟子に始まる儒教における5つの徳目「五常」のことだが、偏らず中庸をよしとする儒教の教えすらも、政宗はほどほどにと言っているようだ。

 定年を控える年齢になれば、仕事人間として、そして一人の人間として、自分の人生とは何なのかなどと考えてしまう。

 戦国時代に終止符を打って天下統一を果たして以後270年余り続く徳川幕府を開府した徳川家康の言葉に、その答えはあるかもしれない。

「人の一生は、重き荷を負うて遠き道をゆくがごとし。急ぐべからず。不自由を常とおもへば、不足なし」(徳川家康)

 人生はまるで苦労の連続のようなものだし、不便・不自由なことも、それが日常だと思えば不平を言うこともないだろう。

「人間五十年、夢まぼろしのごとくなり」と歌った信長の時代から、現代は60歳の定年から平均寿命の90歳近くまで、約30年もの「長い老後」がある時代になってきた。セカンドライフをどう生きるか、いかに死ぬのか、武将たちの言葉に大いなるヒント、励ましがある。

 最後に、秀吉のあまりに有名な辞世の句をかみしめてみよう。

「露と落ち 露と消えにしわが身かな 浪花のことは 夢のまた夢」(豊臣秀吉)

 栄華を極めても、そうでなくても、人生は夢、幻と思えば、何があっても心病む必要はない。

 本文に引用した武将たちの名言は、「日めくり勝暦 戦国武将名言録」「日めくり勝暦 ビジネスに効く名将の言葉」(発行:能登印刷出版部、発売:梧桐書院)を中心に、その他の名言集などから編集部にて抜粋した。

カテゴリー: 社会   タグ: , , , , ,   この投稿のパーマリンク

SPECIAL

アサ芸チョイス:

    デキる既婚者は使ってる「Cuddle(カドル)-既婚者専用マッチングアプリ」で異性の相談相手をつくるワザ

    Sponsored

    30〜40代、既婚。会社でも肩書が付き、責任のある仕事を担うようになった。周囲からは「落ち着いた」なんて言われる年頃だが、順調に見える既婚者ほど、仕事のプレッシャーや人間関係のストレスを感じながら、発散の場がないまま毎日を過ごしてはいないだ…

    カテゴリー: 特集|タグ: , |

    これから人気急上昇する旅行先は「カンボジア・シェムリアップ」コスパ抜群の現地事情

    2025年の旅行者の動向を予測した「トラベルトレンドレポート2025」を、世界の航空券やホテルなどを比較検索するスカイスキャナージャパン(東京都港区)が発表した。同社が保有する膨大な検索データと、日本人1000人を含む世界2万人を対象にした…

    カテゴリー: 社会|タグ: , , , |

    コレクター急増で価格高騰「セ・パ12球団プロ野球トミカ」は「つば九郎」が希少だった

    大谷翔平が「40-40」の偉業を達成してから、しばらくが経ちました。メジャーリーグで1シーズン中に40本塁打、40盗塁を達成したのは史上5人目の快挙とのこと、特に野球に詳しくない私のような人間でも、凄いことだというのはわかります。ところで、…

    カテゴリー: エンタメ|タグ: , , |

注目キーワード

人気記事

1
日本と同じ「ずんぐり体型」アルプス山脈地帯に潜む「ヨーロッパ版ツチノコ」は猛毒を吐く
2
長与千種がカミングアウト「恋愛禁止」を破ったクラッシュ・ギャルズ時代「夜のリング外試合」の相手
3
怒り爆発の高木豊「愚の骨頂!クライマックスなんかもうやめろ!」高田繁に猛反論
4
沖縄・那覇「夜の観光産業」に「深刻異変」せんべろ居酒屋に駆逐されたホステスの嘆き
5
世間はもう「松本人志」を求めていないのに…浜田雅功「まっちゃん」連呼のうっとうしさ