オールスター選出は、喜ばしく名誉なもの。ところが猛虎の球宴ジャックの可能性に、岡田彰布監督以下、阪神首脳陣が頭を抱え込ているというのだ。
今年の球宴は7月19日にバンテリンドームで、翌20日はマツダスタジアムで行われる。ファン投票は6月18日まで日本プロ野球機構(NPB)のウェブサイトで行われるが、6月13日時点では、阪神勢が11ポジションのうち9つを占拠。残る2つのポジション、捕手部門では梅野隆太郎が巨人・大城卓三に1万票にも満たない差で2位。3人が選ばれる外野手部門では近本光司が首位で、ノイジーが3位。ファームで調整中の森下翔太も4位につけている。
今季の阪神は交流戦に入り苦戦が続くが、リーグ首位を維持し「アレ」に向かって突っ走っている。現在のような好成績なら、球宴ジャックとなっても驚かない。在阪テレビ局関係者は、
「締め切り間際に、阪神勢の票がさらに伸びるといわれています。全ポジション独占の可能性もあるかもしれない」
だが、この快挙を手放しで大歓迎というわけではない。在阪スポーツ紙デスクが、阪神ベンチの内情を明かす。
「確かにプロ野球は人気商売ですが、岡田監督は痛しかゆしと思っている。ここまで活躍してきた村上頌樹や木浪聖也などは、1年を通じてフル稼働経験がなく、相当疲れがたまってきているはずです。指揮官としては後半戦に備えて、本来なら球宴期間中に休みを取らせたい。そして不振続きの佐藤輝明などは、球宴期間中に鍛え直したい。ところがファン投票で選ばれれば、それ相応の理由もなく辞退できませんからね。岡田監督のプランに狂いが生じます」
それもこれも、前政権時代の2008年に、苦い経験をしているからだ。この年は開幕からスタートダッシュに成功し、首位を独走していたが、五輪代表に藤川球児、新井貴浩、矢野燿大を送り出したのを境に、チームは打撃不振に陥り、故障者も続出。最大13ゲーム差をひっくり返され、辞任に追い込まれている。
ペナントレースに「絶対」はない。ましてや選手に優勝経験者がいないチームだけに、プレッシャーがかかればどんなチーム状況になるか、想像はできない。お祭り騒ぎに参加する暇はない、ということなのだが…。
(阿部勝彦)