スマホ不適切使用で1カ月間騎乗停止処分を受けていた6人の若手騎手が、今週から一斉に戻ってきた。そのうち、今村聖奈は6月13日の金沢競馬で8鞍騎乗。3着2回、着外6回だった。永島まなみは14日の名古屋競馬で1鞍騎乗。1番人気に応え優勝している。
注目しているのは、今週函館で騎乗を再開させる古川奈穂。彼女は5月15日から「期限限定トレード」により大井の吉井章騎手が栗東で調教に騎乗する代わり、大井で約3週間調教に励んでいた。その成果が見られそうで楽しみなのだ。
この大井の調教の件が報道された際、「スマホ不適切使用の禊のため」と言われたりもしたが、それは違う。師匠の矢作芳人調教師は、古川がデビューしたころから「もう少しスキルアップしなければいけない」と計画を練っていたのだ。
しかし、コロナ禍のために延び延びになり、なかなか実現できなかった経緯がある。コロナ規制が緩和したことによって、ようやく可能となったわけだ。
矢作調教師の父・和人氏は、大井競馬の元騎手&元調教師。つまり矢作調教師は大井競馬場育ちで、小さいころから馬に接するだけでなく、地方の事情にも精通していた。だから大井の盟友・松浦裕之調教師に持ちかけ、今回の騎手のトレードもすんなり実現できた。
トラックマンが語る。
「これは、古川の騎手人生にとってターニングポイントとなりそう。彼女はレース騎乗が多くない上に、中央で調教に騎乗してもせいぜい1日に4~5頭。その点、地方の調教は1日10頭以上乗るのが当たり前なので、スキルアップのために絶好だ」
矢作調教師は日頃から、
「どんなに身体能力が優れていても、馬に乗るスキルというのは、やはり馬に乗ることでしか鍛えられない」
と言っている。初弟子・坂井瑠星がトップジョッキーにのし上がることができたのも、オーストラリアをはじめ海外のいたるところで修業を積んできたからだ。
古川も大井の重いダートで修業したことにより、馬を追う技術が向上したに違いあるまい。ちなみに、今週の函館では新馬戦に出走するワイワイレジェンドをはじめ8頭の馬に騎乗する予定。マークする必要があるだろう。
(競馬ライター・兜志郎)