もはや「大谷翔平のドジャース入り」は既定路線なのだろう。
エンゼルスと同じロサンゼルスを本拠地とするドジャースとの「フリーウエー・シリーズ」(6月21日、22日の)では、ドジャースファンもマウンドの大谷に大声援を送った。ドジャースのロバーツ監督は「全ての監督が『彼はドジャーブルーの方が似合う』と言うだろう。残念ながら、今夜は彼と対戦しなければならないが」とベタ褒めだった。
本サイトでも既報したように、米メディア「ジ・アスレチック」が実施したメジャー22球団、103選手へのアンケート調査の質問「大谷が来季所属する球団はどこだと思うか」に対し、57.2%がドジャースと答えている。
大谷はエンゼルスとの契約を延長しない限り、今季終了後にFAとなるが、なぜそこで、12年契約で6億ドル(約790億1000万円)という史上最高額でのドジャース入りだと言われるのか。根拠はいくつもあると、メジャー担当記者が話す。
「米中の関係悪化が懸念される中、アメリカでは『アジア人ヘイト』が払拭できていません。東海岸の球団フロント、ファンの中には『大谷のベーブ・ルース超えを面白く思わない勢力』もあります。東北出身の元メジャーリーガー佐々木主浩と現ブルージェイズの菊池雄星が、同じく西海岸のシアトル・マリナーズと契約したのも、日系人が多く、海産物が豊富だから。ロサンゼルスはシアトル以上で、在米日本人は全米最多。アメリカ国内の日本食レストランの20%以上が集まっており、低温殺菌済みの高級卵、地元産のウニ、氷見の寒ブリまで手に入る。睡眠と食事に人一倍気をつけている大谷が、全米で最も日本食材が手に入りやすいロスをわざわざ離れるとは考えにくいのです」
そして最大の根拠が「ロスには『ドン・キホーテ』があるから」だという。いったいそれが、大谷とどんな関係があるというのか。メジャー担当記者が続ける。
「ロス最大の日系スーパーが『ドン・キホーテ』と同グループ傘下に入り、2021年に『ドン・キホーテ』そっくりにリニューアルされました。納豆も『うまい棒』もあれば、大谷のスポンサーであるコーセーや西川寝具、セイコーの商品も販売されています。ド軍が破格の6億ドルで契約しても、日系企業や『ドン・キホーテ』で取り扱いのあるアジア系企業のスポンサーがつくでしょうから、元は取れる算段です」
そしてドジャースには「マイノリティのメジャーリーガーを育てる」という球団レガシーがある。
ドジャースはMLBで初めて黒人選手とメジャー契約した球団だ。元オーナーのオマリー一族と側近のアイク生原氏は、野茂英雄や朴賛浩(韓国)、郭泓志(台湾)らアジア系メジャーリーガーを次々と誕生させた。
「新型コロナでアメリカ国内にアジア人ヘイトが起きた際には、球団と沖縄生まれのロバーツ監督がそれぞれ、抗議声明を出したほど。大谷は人種差別や経済危機で分裂しかけている移民の街のシンボルであり、ヒーローなんです」(前出・メジャー担当記者)
アイク生原氏が志半ばにガンで倒れる前、最後に面倒を見ていた長嶋一茂も6月23日放送のテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で「ドジャースに移籍すれば200勝するかもしれない」と、大谷を援護射撃した。ツインズの前田健太もド軍時代に継がなかった「ドジャース野茂の16番」を、大谷が背負う日は近いかもしれない。