「オールスター9奪三振」「江夏の21球」など、プロ野球界で多くの伝説を持つ江夏豊氏。通算206勝の左腕はプロ2年目の1968年に、401奪三振という日本記録を樹立。それから55年経った今も破られていない。
そんな勝負師をもってしても、ミスタープロ野球は「ファン」だと言い、あろうことか、試合の最中に「カッコいいな~」と思わず唸ってしまう振る舞いがあったと明かすのだ。
野球解説者・江川卓氏のYouTubeチャンネル〈江川卓のたかされ【江川卓 公式チャンネル】〉に出演した江夏氏は、初の巨人戦での長嶋茂雄との初対戦を振り返った。それはルーキーイヤーの1967年のことだった。
「2球で追い込んだんだよ、インコースにドン、ドンって投げて。『よしよしよし、こりゃ三振取ってやる』と思って、胸元に思い切り自信のある球を投げた。それをものの見事にレフト線よ、弾丸ライナーを。それでセカンドベースに滑って、普通だったら打ったピッチャーをセカンドベースから睨んでくるやん。(ミスターは)知らん顔してユニフォームをパタパタして土を払ってるわけよ。それ見て『カッコいいな~』。そう思った瞬間、長嶋ファンだよね」
敵までも魅了したミスター。その大スターをライバル視していたのは、江夏氏の先輩にあたる村山実氏だった。江夏氏が語った初の巨人戦は5月31日、村山氏の先発で幕を開けた。だが3回終了時に握力の低下に気付き、江夏氏に交代。村山氏は右腕血行障害と診断された。
以降、指に負担のかかるフォークを禁じられ、20勝以上を挙げることは叶わず。阪神のエースの座が江夏氏へと移行する年になったのだった。
(所ひで/ユーチューブライター)