プーチン政権に反旗を翻した、あの「ワグネルの乱」の後、ベラルーシに亡命したとされるエフゲニー・プリゴジン氏の姿が6月29日、ロシアのサンクトペテルブルクで目撃された。
その時の模様を捉えた写真には、黒いキャップを目深にかぶり、白い不織布マスクで顔を覆った人物が、ワグネル所有のものと思われるヘリに乗り込む姿が写し出されている。黒い革ジャンに身を包んだその人物はプリゴジン氏と背格好がよく似ており、プリゴジン氏だと言われれば確かにそう見えなくはない。サンクトペテルブルクに姿を現した人物は、ベラルーシにいるはずのプリゴジン氏だったのか──。
実は本物のプリゴジン氏には「左手の薬指が欠損」という特徴がある。しかも第1関節まで欠損している様子は、それまでに公開された映像や写真で確認されてもいる。
ところが、件の写真に写っていた人物の左手薬指には、なんらの欠損も見られない。つまり、サンクトペテルブルクで目撃された人物はプリゴジン氏ではなく、よく似た人物だったということになるのだ。
ロシアの諜報戦術に詳しい国際軍事アナリストが指摘する。
「欠損した指が突然、生えてくるなどということはありえません(笑)。要するにその人物は、プリゴジンの『影武者』だったということです」
ここで疑問なのは、なぜ影武者が現れたのかだ。いったいどういう必要性があったのか。国際軍事アナリストが続ける。
「実はプリゴジンがベラルーシに亡命した直後から、ワグネル所有とみられる航空機やヘリコプターが、サンクトペテルブルクとの間を何度か往復していることが確認されています。ところがそこに、プリゴジンは乗ってはいなかった。つまり、今回の影武者の一件も含めて、プリゴジンは攪乱情報を流し続けることで、自身の健在ぶりをアピールしたかったのです。それにしても、高度諜報戦の時代に、少し調べればたちまちバレてしまうような影武者を使うとはなんとも稚拙というか、笑える話です」
次はどんな爆笑手段を見せてくれるのか。今後が楽しみである。