世界を震撼させたロシアの民間軍事会社「ワグネル」トップのプリゴジン氏による反乱は、いまだに不透明な部分が多い。飛び交う説を挙げれば、「ロシア国軍上層部とプリコジン氏の対立」「プーチン大統領とプリコジン氏の対立」「ロシア国軍のスロビキン航空宇宙軍総司令官とプリコジンが組んだクーデター説」「プーチンとプリコジンによる猿芝居」などだ。
日本の公安関係者が明かす。
「これだけあらゆる説が出る理由は、プリゴジン氏がプーチン氏から『反逆者』呼ばわりされ抹殺指令まで出たという情報があったにもかかわらず、ベラルーシにアッサリと亡命できたから。しかも、その後もプリゴジン氏はロシアを自由に出入りしているとの話もある。反逆者であれば、なぜそんなことが許されるのか理解し難い」
しかも、ここへきてさらなる不気味な兆候があるという。
「6月27日にベラルーシのルカシェンコ大統領は、ロシアがベラルーシに配備するとした戦術核兵器について『我が国はロシアの同意なく核兵器を使用できる』などと述べている。この発言はルカシェンコ氏が『核のボタン』を自由にできるかどうかは別にして、欧州各国やウクライナを恐怖のドン底に突き落とした。ロシア側が核兵器の使用権はロシアにあると言っているのと大違いですからね」(前出・公安関係者)
ルカシェンコ氏は6月30日の演説で、「配備された戦術核兵器は実際には使用されない」としているが、一方でプリゴジンの反乱鎮圧に貢献したのは俺だ、とばかりにプーチンをナメ始めた可能性もあるという。
「ルカシェンコ氏はベラルーシを30年近くにわたって統治し続けている。選挙を不正操作している噂は絶えず、近年ではベラルーシの反体制派ジャーナリストの身柄を拘束するため旅客機を強制着陸させるなど、やりたい放題。しかもプーチンを嫌っているものの、経済的、政治的に生き延びるためプーチン寄りを演じているともいわれる。そんなルカシェンコとプリゴジンがタッグを組む気配があるんです。『ワグネル』の精鋭をベラルーシに呼び込む。そこへ、ロシアの核を自分たちの使いたい時使えるとなれば何が起きるか。世界はプーチンの核の脅し文句より『ルカシェンコ+プリゴジン』の暴走を恐れ始めている」
プリゴジンの反乱の先に何が待っているのか。
(田村建光)