ひとつのドラマで同一人物の入浴シーンが、なんと200回以上も流れたことで、ギネスレコード申請までされたのが、あの人気時代劇「水戸黄門」(TBS系)に24年間レギュラー出演していた、由美かおるである。
由美は35歳だった1986年から女忍者「かげろうお銀」「疾風のお絹」として、通算716回出演。要所で挿入される入浴シーンで抜群のプロポーションを披露し、番組のアイドルとして男性視聴者の目を楽しませてきた。
ところが2010年4月5日、そんな彼女が翌週から始まる「水戸黄門」(全12回)を最後に番組を降板することになり、記者会見が行われることになったのである。
TBSによれば、番組降板は由美サイドからの申し入れだったというが、会見では、
「出演25年。苦しいことも楽しいこともありました。ファンの皆さま、スタッフに感謝したい。そして人生たった1回ですから、これまでやれなかったこと、例えばサイエンスものとか、語学でもそうですし、若い頃にやりたかったことに新たにチャレンジしたい。そう思ったことが(降板申し入れの)きっかけです」
目に涙を浮かべ、由美はそう語ったのだった。
聞けば京都・太秦では毎週5日間の撮影があるため、長期にわたって他の番組や映画の仕事ができず、
「一途にこの仕事をやってきましたし、性格的にものめり込んでしまう」
自分の時間も満足に持てなかったのである。
とはいえ、番組スタートから四半世紀を経過する中、黄門様をはじめ大半のキャストが入れ替わるが、唯一、彼女だけが不動の存在だった。
「かっこいいお銀さんみたいになりたい、という子供たちの手紙もあり、本当に嬉しかった」
入浴シーンが見られなくなるのは寂しい限りだが、
「お風呂にタダで入れなくなりましたからね、これからは家の近くの銭湯で、のびのびしてみたい」
TBS関係者に話を聞くと、次のように明かしてくれた。
「由美さんサイドには、以前からその予兆はありました。助さん、格さん、最後はあのうっかり八兵衛さえも降板となり、まさに世代交代の時期。ただ、制作側には由美さんを切る、という選択はなかったようなんです。そうはいっても、彼女も還暦間近。その前に…という思いがあったことは否めないでしょうね」
結局、国民的お約束の入浴シーンは、6月28日をもって最終回を迎えた。11月の還暦まで4カ月を残す、なんとも残念な降板劇だったのである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。