性的指向及びジェンダーアイデンティティの多様性に関する国民の理解の増進に関する法律(以下、理解増進法)。この長い名前の法律が6月23日に施行され、多様な性に対する施策が始まっている。
そんな矢先の7月11日に、トランスジェンダーの職場環境をめぐる最高裁判決が下された。経済産業省ビル内の女性用トイレ利用を制限されたのは不当だとして、トランスジェンダー職員が国を訴えていたのだ。判決は「国の対応は違法」というものだった。
この件に憤激の声を上げたのは、元警察官で一般社団法人LGBT理解増進会代表理事の繁内幸治氏と共同で、Twitter等で活動する玉置祐道氏である。
「この最高裁判決により、テレビなどの各マスコミでは、性同一性障害による、本人が望む性の施設利用が認められた経緯等を全く無視し、無責任なデマや憶測を言い散らかしています」
いったいどういうことかといえば、
「このトランスジェンダー職員の性同一性障害を経済産業省が認める一方で、他の女性職員の拒否があるとして一部制限を設けた理由が曖昧だったために出た判決。つまり、トイレ使用の制限が認められなかった判決であって、使用の是非ではないのです。あくまでも管理者との話し合いを経て、犯罪にならないように認められた『個人』が、限られた施設での女性用トイレの使用が可能となったにすぎません」(玉置氏)
それなのに多くの報道では、政治家や弁護士らが「女装した犯罪者がトイレに入ることが可能になった」「女装した男性が、公衆浴場の脱衣所に入ることを防げない」などとワケのわからないことを吹聴したのだと、玉置氏は主張する。
「そうした女装犯は以前から存在しています。『可能になった』などというのはおかしな言い方で、昔も今も捕まります」
その上で、次のようにも言及するのだ。
「7月17日の『サンデーモーニング』(TBS系)では、女装した男性がトイレに侵入するなど妄想であると、実際に発生している犯罪をないもののような妄言を展開していました。ことさらに混乱を煽るかのような番組制作がなされています。このようないい加減なデマに惑わされないように、LGBT当事者だけでなく、国民にとって安全でしっかりした指針を示すよう、国に要請したいのです」