「他人の個人情報が紐づけられた」に始まり、ついには「公金受け取りで他人口座に振り込まれる」事態が発生。マイナンバーカードのトラブルが止まらない。これはもう返納するしかない。でも、どうすればいいの?
16年1月に発行が始まったマイナカード。以来、47万件の返納がある。が、トラブルが発覚した6月だけで2万件に上る。総務省が任意に抽出した自治体ではその4割が自主返納であることが判明したという。
中には、「もらったマイナポイントも使っちゃったし、不信感も募ってきたところで、自分も返しちゃおう!」と決意した人も多いのではないか。ところが、期限切れのクレジットカードのように、ハサミで断裁しちゃえばいいわけではない。ましてや、「返納は微々たる数」と言い放った河野太郎デジタル相宛てに腹いせとばかりに送りつけるなんて愚の骨頂である。
「正解は住民票のある役所に行って、『個人番号カード返納届』という書類に必要事項を書くだけ。ものの5分もあれば終了です」
と話すのは経済ジャーナリストの荻原博子氏。役所によっては、マイナカード以外の本人確認書類を求めてくるケースもあるという。が、これで本人のマイナカードは破棄されて使用不可能となる。
「返納までしなくても、金庫に眠らせておけばいいという人もいると思いますが、どんなルートでマイナカードが人の手に渡って悪用されるかわかりませんから、自主返納する方が安心です」(前出・荻原氏)
もとより、コンビニで住民票や印鑑証明など公的証明書が入手できるぐらいしか利便性がなかったマイナカード。返納したところで、公的証明書を発行してもらえなくなるわけではないし、そうそう困らない。
ただし、カードが消えてもマイナンバーという背番号がなくなるわけではない。つまり、番号に紐づけられた個人情報は残るということ。となると、発生しまくりのトラブルから逃れられるというわけではない。しかも、自主返納することでデメリットも指摘されている。ITジャーナリストの井上トシユキ氏が解説する。
「健康保険証が廃止されるという、いわば、マイナカード強制取得の政治的な意向が変わらない以上、病院のお世話にならない人間はいないのですから、返納しても再取得する必要に迫られる可能性があります」
ちなみに、マイナカードの再交付を受けるには、手数料1000円が必要になってくる。
「そもそもシステムやソフトの開発は必ずトラブルが起きるもの。今は想定内の出来事が起こっているという感じがします、とはいえ、これが民間の現場ならば、トラブル発生時にどう説明するのかといった事前的合意のようなものがあるものです。慌てふためく状況を見るに、役人は事前的合意ができていなかったんだろうなと思わざるをえない。残念です」(前出・井上氏)
繰り返されるトラブルに、岸田文雄総理は秋までの総点検を指示した。
「でも、配布された8300万枚のマイナカードの29項目を人海戦術で点検するなんて、またトラブルが起きないわけがありません」(前出・萩原氏)
返納しようがしまいが、自分だけはトラブルに巻き込まれませんように、と祈るしかないのか。