社会

千葉県民を震撼させた昭和の「トラ脱走事件」今も残る都市伝説とは

 先ごろ、北海道で放牧中の牛を相次いで襲っていたヒグマ「OSO18」が7月に駆除されていたことが判明したが、この騒動で千葉県の内房の住民たちが思い出した事件があるという。それは昭和54年(1979年)8月に発生した「トラ脱走事件」だ。

 君津市の鹿野山にある寺の住職は動物好きで、敷地内で多くの動物を飼育し、干支の動物がすべているというのが自慢(竜はタツノオトシゴ)。トラはなんと12頭も飼われていた。

 そのうちの3頭がオリからいなくなっていたのが判明したのが8月2日の夜。1頭はすぐに発見されたが、オスとメスの2頭は逃げ出し、周辺住民には外出禁止令が出された。警察や消防団、地元の猟友会で捜索隊を結成。人里離れた山の中を逃げたトラを求めて探し回る日々が始まった。

 メスのトラは2日後に寺近くの山で発見され射殺されたが、オスは見つからずその後1カ月近くにわたって逃げ続けた。当時を知る記者が振り返る。

「鹿野山の周辺は道路から少し外れると自然が豊かで、人が足を踏み入れることがない場所です。そんな所でトラが逃げたと聞いて、まず見つからないだろうなと思いました。案の定1カ月も捕まることはなかった。不安に怯える日々が続いたのを覚えています」

 結局、オスのトラは民家で飼われていた犬を噛み殺したことがきっかけで発見され、猟友会が射殺。騒動はこうして幕を閉じた。

 しかし、話はこれで終わらない。

「発見まで時間がかかったため、逃げたトラに対する興味が薄れ最終的にどうなったのか知らない住民や、結局は発見されずに捜索が打ち切られたと思い込んでいる人もいました。さらにはオスとメスの2頭が逃げきり、山中で暮らして繁殖し、今では大きな群れを築いているという都市伝説まで生まれたんです」(前出・記者)

 トラは駆除されたが、その都市伝説は今も生き残っているという。

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