18年ぶりの優勝へ向けマジックが点灯した阪神は、8月25日から宿敵巨人と東京ドームで真夏の3連戦を行う。「まだまだ試合はあるんで。1試合、1試合ね」という岡田彰布監督は、表向きは余裕の表情を貫く。
岡田監督が「優勝」を「アレ」と言って決して口にしない理由の一つに、2008年シーズンに最大13ゲーム差をつけながら逆転優勝をさらわれた忌まわしい過去がある。「世紀のV逸」となったこの年の指揮官は、采配5年目だった岡田監督。そして逆転Vを達成したのは巨人の原辰徳監督だった。
阪神の悔しいV逸はこの年だけではない。1992年には9月にヤクルトに追いつかれ最終的には2位。さらにさかのぼれば73年、阪神は巨人との最終戦、それも本拠地甲子園で0-9の惨敗で逆転Vを許した。
この時は試合終了と同時に3000人近い阪神ファンが暴徒化してグラウンドになだれ込んだ。沈静化に苦慮した機動隊がこの年、阪神の指揮を執っていた金田正泰監督に呼びかけを要請。金田監督は球場外で騒ぎを続けるファンに対してマイクを持ち「気持ちは皆さんと一緒。来年こそ頑張るので、どうか理解してほしい」と訴えて何とか収まった。
さて「18年ぶり」といえば、2003年に優勝を決めた故・星野仙一監督も同様だ。当時セ・リーグ最速となる7月8日に優勝マジックが点灯。もちろん星野監督本人、チームに根付く「V逸の歴史」は先刻承知の上だった。当時の番記者や親しい関係者に「これで優勝できなかったら、日本にはおれんな…」とよくぼやいていた。優勝決定直後のインタビューで「ああ~しんどかった」とした名言は今も語り草。岡田監督も今、同じような心境ではないか。
この3連戦で巨人を叩けば一気にVロードへ一直線の阪神。ただ、負け越しでもすれば「V逸」の負のスパイラルがまたも浮上する、大事なTG決戦となる。
(小田龍司)