福島第一原発処理水の海洋放出が波紋を広げている。中国税関当局は、日本を原産地とする水産物の輸入を8月24日から全面的に停止すると発表。さらに「日本の食品の汚染リスクの確認を続け、日本から輸入される食品に対する監督管理を強化する」としており、水産物以外の食品の輸入にも影響が及ぶことが懸念されている。
これまでにも中国は、福島、宮城、東京など10の都県からの輸入を禁止してきたが、今後は全国に拡大されることになる。また、香港政府も海洋放出が行われた場合、水産物の輸入を全面禁止することを表明している。
日本にとって中国と香港は水産物輸出先のトップ。全面禁止がいつまで続くか分からないが、大きな影響が予想される。
一方で、日本の魚の価格が大幅に安くなるという指摘もある。タレントのフィフィなどは中国の対応により魚の値格が下落するとし、「私は魚大好きです。日本の魚どんどん食べますよ」とツイートしている。
食品ジャーナリストが語る。
「実は日本の海産物の価格を吊り上げている原因のひとつは『輸出』です。かつて中国人は生の魚を食べませんでしたが、近年は特にマグロが人気になっており、バイヤーが直接日本の漁港に買いつけに来ることもしばしば。そんな中国や香港の需要がなくなればそのぶん、日本の消費者は安く購入できるというわけです」
秋の風物詩ともいえるサンマはかつて、1匹100円が相場だったが、近年は高騰が続き1000円の値を付けたこともある。実はこれも中国がサンマの漁獲量を急速に伸ばしている影響もあるためだが、海洋放出を嫌って中国が漁獲量を減らせば、サンマの価格も下落するかもしれない。
(ケン高田)