今回の旅打ちレポートは金沢競馬である。47都道府県のうち、まだ行ったことがないのは秋田県と島根県、沖縄県だが、金沢のある石川県は富山、福井に出かけた時に特急電車などで通り過ぎただけなので、金沢は実質的に初訪問。馬券も当てたいが、楽しみは魚が旨い寿司だ。旅打ちが「食べ打ち」になっても…そんな気分である。
北陸新幹線が走るようになって、東京からはかがやき号に乗れば、わずか2時間半ほどで金沢に到着する。北陸新幹線が金沢まで開通する前は在来特急利用で4時間もかかっていたから、1時間半も短縮された。旅打ちに慣れると、2時間半はアッという間。車内で予想紙を広げ、タブレットのレース映像に夢中になっているうちに、金沢に着いていた。金沢はモダンで大きな街だった。
地図を見ていたら、金沢駅から競馬場までは車で2、3分くらいかと思ったが、車のナビでは9キロ近くある。15分はかかる距離だ。そこそこ離れている。
競馬場は市内の入江から内灘にある河北潟に移転して50年、アニバーサリーの年でもある。スタンド裏には河北潟が広がり、遠くには内灘の大橋がかすかに見えて、旅情をそそられる。
金沢競馬場内には寿司屋がある。カウンターに座って握りを食べることができるのだ。ギャンブル場の旅打ちで場内に寿司屋があるのは、静岡競輪場だった。1コーナー裏の寿し政本店。ゆえに、寿司屋があるギャンブル場に出かけたのは全国87公営場で2場目ということになる。
競馬総務課・専門員の篠川正史さんに連絡したら「お店が閉まる前に、早めにお越しください」とのこと。金沢12時着、競馬場着は13時前。寿司にありつけるだろうか。
飲食店が並ぶ場内を、篠川さんがひと通り案内してくれた。正門を入って左にあるのが、市内などにも8店舗を営業する「金澤玉寿司」、スタンド裏の軽食堂街には「宇野気玉寿司金沢競馬場店」ほか8店。スタンド2階と3階にも各1店舗。何でもある。
しかし、ここでは寿司一択である。先に宇野気玉寿司で握り(1230円)をお願いする。大将は実に手際がいい。カウンターにはすぐに8貫が並んだ。鯛、あなご、イカがうまい。
次に金澤玉寿司。ここでは車エビ、うに、また穴子、赤身をお好みで(1350円、写真)。柿の葉すしが気になったが、このくらいにしておこうか。金沢競馬の寿司は例えば、都内の街場の寿司屋と比べても、間違いなくレベルが高い、モノが違う感じだ。
スタンド2階に行ったら、笹の葉すしを見つけた。鱒、鯛、鯖の3種類あるが、残っていたのは鯖1個だけ。これもいただく。寿司3連発の固め打ちになった。やっぱり「食べ打ち」だ。
この日の金沢競馬は通算第12回、4日目。右回りコースで1400メートル、その奥100メートルからスタートする1500メートルのレースが多く、この日は1400メートルが8レース、1500メートルが4レースだった。直線は236メートルだ。
6RはC2、1500メートルの8頭立て。金沢競馬のポイントは騎手だ。9月8日までのリーディングジョッキーのベスト5は①栗原大河、②吉原寛人、③青柳正義、④米倉知、⑤中島龍也。2日目、3日目のレースを見ていて気になったのは、青柳騎手だった。乗り方が独特なのだ。立ち上がって馬の手綱を引くというよりは、馬がステップするたびにいったん腰を下ろして馬の背中を押すような、珍しい乗り方をする。それで何レースも連に絡んでいる。
しかし3日目をチェックすると、パッとしない。場内で聞き耳をたてると「やっぱりぃ、栗原がぁ」と語尾が伸びる北陸訛り?が聞こえてくる。地元ファンはリーディング通りの栗原推しなのだろう。栗原騎手は25歳で、今が伸び盛り。比重を置くならこっちか。
だが、6Rは栗原騎手が騎乗していない。迷って馬券を買ってドボン。
(峯田淳/コラムニスト)