前回の続きである。門別競馬には緑色の帽子を被ったインド人の厩務員がいて、パドックで馬を引いている。インド人は厩務員だけかというと、やはりそうではない。家族や友人らと移住している人もいる。同胞が競馬を楽しんでいるのだ。場内にはインド人のために、ヒンディー語らしきガイドも置いてあった。
7月13日の門別競馬3日目、11Rで度肝を抜かれた。3連単で253万9160円の超大穴馬券が飛び出したのである。また夢馬券が出ないものか、どうやったらゲットできるかと、妄想は膨らむばかり。頼りになるのはコンビニのプリントサービスで取り出した予想専門紙と、北海道在住のベテラン記者のアドバイスだ。
リーディングトレーナーの田中淳司厩舎の馬が来る。田中淳調教師は2022年度のランキングでトップ。同厩舎所属の落合弦人騎手もリーディング1位、服部茂史騎手が4位と上位を占める。大穴が出た7月13日は同厩舎5勝、3着2回とデータ通りの成績だった。
結果を見て気が付いたのは、1番人気の絡みだ。13日は1番人気が3着までに入ったのが9レースで、1番人気が勝ったのが5レースもある。馬券は1番人気を絡ませることだ。
7月18日、田中淳厩舎の馬は6R以降6、7、10の3レースに出走する。まず6Rだ。6番人気の馬は6着、ドボン。7Rは3番人気で、3着に来て3連単2570円。これも取り損ねて、ドボン。8R、9Rもドボン、4連敗で焦りはマックスになった。
迎えた10R。同厩舎の馬は4番人気で、服部騎手が騎乗している。結果は2番人気と1番人気の堅い決着で、3着が服部騎手の馬。3連単は1番人気の880円だった。トリガミだ。
11Rは1番人気を重視して【4】から買う。【4】1着の3連単2270円、3連複1480円をダブルでゲットしてホッ。12Rは素人目にも1番人気の馬で堅い。2着【4】【6】【9】、3着【3】【4】【5】【6】【9】を買ったら、3連単【7】【5】【9】7090円。2着【5】が抜けていて、ドボン。7打数2安打だ。17日の函館競輪で勝った分を吐き出し、2日間で2万5000円のマイナスとなった。
馬場の特徴は直線の長さだ。この日は12R以外は外の右回りコースで、直線330メートルと長い。4コーナーを回ってから、逃げ・先行馬が猛烈に叩き合うのだ。そして直線半ば、後方から一気に追い込む馬もいる。どの馬がどんなレースをするのか見極めるには、やはり門別に通うしかない。
入場門から近いスタンドを歩き回ったが、外とはガラス戸で仕切られている。夜7時過ぎ、ナイター照明が馬場を浮かび上がらせる頃になって、ガラスに激しくぶつかってくる小さな虫がそっちにもこっちにも。見るとコガネムシだ。ガラスにぶつかってから地面に叩き落とされ、仰向けにひっくり返って、足をバタバタさせている。「コガネムシは金持ちだ~」だっけ。そんな歌があった。降るようにコガネムシがいるのに、ご利益がなかったのはどういうことなのか…。
途中、インドカレー店の横「いずみ食堂」で「ブタ肉そば」(600円)を食す。珍しい縮れた太麺のそばで、地元の有名店の出店だ。縮れているので、濃厚なダシが麺によく絡む。
夜は宿の「四季の風」近く、母親と息子でやっている居酒屋に出かけた。お目当ては本場のししゃも。ししゃもはご当地、鵡川の名産だが、近年は全く獲れないのだとか。季節の10月に、禁漁になるかも…という。
「鵡川のししゃもは刺身でも食べられる。お寿司を出す店もあるからね。せっかくだから、うまいウタポッポ(ししゃも)を食べてもらいたいけど…」
と女主人は悔しがる。ししゃもの寿司やら刺身やら、食いしん坊はししゃも食いたしで頭がパニックになった。ただし漁獲量が減って、地元でも1匹300円とか、500円もすることがあるらしい。ししゃもは今や、高級魚なのだ。
翌19日は社台ファーム周辺をドライブし、苫小牧駅で借りた車を新千歳空港で返した。
インバウンドで賑わう新千歳空港では、客が少なそうな北海道料理の専門店に入って、北海道でのシメの一杯。メニューにししゃもあり。「鵡川産 子持ちししゃも」1460円。価格高騰は本当だった。
(峯田淳/コラムニスト)