自民党最大派閥の安倍派(清和会)で、土井亨衆院議員(宮城1区)が塩谷立座長に退会届を提出した。これで所属議員は100人から99人となる。安倍派関係者によれば、会長だった安倍晋三元首相が暗殺された後、引退したはずの元会長、森喜朗元首相が松野博一官房長官や萩生田光一政調会長ら「5人組」の後見人として影響力を行使している状況を、面白く思っていない様子だったという。
というのも、土井氏と森氏との間には「因縁」があるからだ。土井氏は宮城県連幹事長時代の2001年1月、主婦が県連に「これなら私が総理大臣をやった方がマシよ」と抗議電話をかけてくるCMを企画した。当時の森内閣が不人気だったことから、森首相批判につながるとして、当時の党幹事長・古賀誠氏が待ったをかけた。土井氏は「内部から立ち直るというメッセージを込めただけだ」と反論したが、森氏は不快に思ったという。
さらに「5人組」ばかりが閣僚や党の要職を独占していることにも、不満があった。土井氏は当選5回の入閣適齢期だが、「5人組」がことさら厚遇されていると映る。これは土井氏のような当選5回前後の議員に共通しているという。「5人組」ではなく塩谷氏が座長になったことにも、当選4回や5回の議員の後押しがあった。
土井氏の退会が「アリの一穴」となって、最大派閥が大きく揺れるのか、あるいは土井氏だけにとどまるのか。先行きが注目される。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)