今もしばしば話題になる1998年サッカーフランスW杯での選手選考。大会直前に三浦知良と北澤豪、市川大祐を代表から外すと当時の岡田武史監督が発表すると、驚きと不満の声が日本中に巻き起こった。2人の間にわだかまりはないと岡田氏は話しているが、詳細についてはカズも岡田氏も口を閉ざしたままだ。
そんな選手選考の舞台裏を、北澤氏と当時代表メンバーだった山口素弘氏、本田泰人氏、岡野雅行氏が前園真聖氏のYouTubeチャンネルで明らかにしている。
メンバー決定の当日を北澤氏はこう振り返る。
「昼食前までに外すメンバーを呼ぶということだった。もうないかなと思っていたら、ぎりぎり12時ぐらいに電話が来て『部屋に来てくれ』と言われた」
岡田監督の部屋に行くと、W杯のメンバーから外すことが告げられ理由も説明されたという。その理由とは、3バックにしたことで北澤氏のポジションがなくなったから。それを聞いた北澤氏は、
「もう4バックに戻さない?と聞いた。岡田監督は『戻さない!』。ところがジャマイカ戦で4バックになっていて、戻してるやん!と突っ込んだ。流れだから仕方ない」
と話し、今も納得していない様子を見せた。
一方、カズはどうだったのか。カズと岡田監督がどんな話をしたのかは知らないものの、その後のカズの様子を北澤氏は見ていたという。
「岡田監督との話が終わった後、カズさんの部屋に行ったら怒りながら荷物を整えていた。カズさんは普段イライラした顔はしないけど、珍しくイライラしながら片付けていた。井原(正巳)さんとゴンちゃん(中山雅史)がいて、井原さんなんか泣いていた」
キャプテンの井原はかなりショックを受けたようで、山口氏はこんな裏話を明かした。
「発表された日の午後の練習で井原さんがケガをした。けっこう大きなケガで右膝内側靭帯を損傷した。実は初戦のアルゼンチン戦に間に合うかどうかという大けが。するはずのない大けがだった」
と、カズ落選がチームに与えた影響は小さくなかったという。北澤氏はメンバーからは外れたものの、帰ってもいいしそのままチームに帯同してもいいと言われたそうで、
「残っても迷惑かけそうだったから」
と帰国を選んだという。
カズと北澤のいない日本代表はグループリーグで3戦全敗。本田泰人氏が、
「カズさんが3試合どこかで出ていたら点を取っていた気がする。大舞台に強いカリスマ性があるから」
と話したが、もしカズがいたら確かに日本のサッカー史は変わっていたかもしれない。
(鈴木誠)