“人生の引き際”について。これは、いろいろ考えさせられたニュースだね‥‥。
【アメリカ人女性の『安楽死宣言』が波紋を広げる】
カリフォルニア州のブリタニー・メイナードさんがSNSで「安楽死を望んでいる」と表明。29歳の彼女は今年1月に悪性の脳腫瘍と診断された。手術を行ったが、腫瘍の肥大化は止まらず「余命6カ月」の宣告を受ける。その後、彼女は夫と相談し「安楽死」を選択、法律で「安楽死」が認められているオレゴン州に移住した。11月1日に宣言どおりに服薬し「安楽死」を遂げたことが明らかとなり、世界中で「死ぬ権利」の議論が起きている。
日本は「死」について、ちゃんと議論がし尽くされていない。
例えば、日本には死刑制度がある。制度自体の是非は置いといて、死刑は刑の確定から特別な理由がないかぎり6カ月以内に執行しなければいけない、と法律で決められている。しかし、執行の命令を出す法務大臣によっては、出さないこともある。これは法律違反だよね? もし執行したくないなら、法律を変えればいいのに、法案を提出するわけでもない。この“何となく”で死刑を扱っていることにも、「死」の議論が尽くされていないことが表れているよね。
自分で死を選ぶのは、普通は「自殺」と言う。他に、それに当たる言葉はない。そして、自殺はよくないと思っている。まだ生を保てるのに、みずから命を断つのはダメだ。ただ、余命何カ月と宣告され、残りの人生を痛みや苦しみと相対して生きていくしかない、そんな人が「痛みなく死んでいきたい」と願うのは、誰にも止められないよ‥‥。
ウチは女房に先立たれた。体を悪くしてから、1年近く入院していましてね。その頃は、朝の番組が終わったら、すぐ女房の病室に行って、消灯までずっと一緒にいて、いろんな話をしましたよ。週刊誌は毎日の病室通いは嗅ぎつけずに、たまたま銀座に飲みに行ったことだけ嗅ぎつけてくるもんだから、女房に「バカね~」なんて言われたりしてね(笑)。人生で一番、女房と長い時間を過ごした1年だった。女房は自分の最期についても「無理に命を延ばさないで、痛みを止める薬は飲むけど、自然呼吸ができなくなったら‥‥」とも話していてね。
そんな時に、女房が好きな米国人画家の絵がNYの画廊に出品されるのを聞いて、女房も行きたいと言うから、先生に相談したんだ。すると、先生は決していい顔はしなかった。バカなことに私は、そんなにひどい病状だとは思わなかった。でも、そんなにひどいなら、なおのこと、絶対にNYに連れて行かなくてはと思った。無理を通して、女房に絵を見せてあげられた。NYの最後の晩に食事をしていたら、女房は意識をなくしたんだ。慌てて帰国して、1週間後に女房は亡くなってしまった。幸い、子供たちも兄弟も最期を看取ることはできた。
私がしたことは「自殺」の手伝い、そう呼べますか? 最新の医療技術で、強制的に生き長らえることもできたかもしれない。ただ、それは生きていることにならないんじゃないか? 私はそう思っている。日本人も「尊厳死」や「安楽死」について、真剣に考えなくてはならないよ。
◆プロフィール みのもんた 1979年に文化放送を退社後、フリーアナとなる。以後、数々の番組で司会、キャスターを務める。1週間で最も生番組に出演する司会者のギネス記録保持者でもある。